今野誠一の“マングローブ的生き方”ブログ

2010.02.04経営戦略

失敗学(リーダーの資質)

昨日のブログは内村鑑三氏の「成功の秘訣」について書いたので、今日は「失敗学」に関する話題にしようと思います。
 
あまり前向きな話ではないので、あくまで実名は控えますが、昨日ある勉強会に参加したんですね。
こんな不況の中だけど皆で勉強して乗り切っていこうという前向きな会で会自体はよかったんですけどね。
スピーカーのお一人が、業績悪化で最近大きなリストラをしたらしいんです。
なんと、その例をひいて「自社がいかに迅速に上手にリストラができたのか?」というスピーチだったんです。
 
     業界に先がけてリストラをしたから黒字になって、業界で時価総額ナンバー1を維持できた。
     日頃から理念がしっかりしているから、リストラをしても社員は受け入れてくれたんだ。
     日頃から厳しく社員を鍛えているから、転職活動でも自社の社員は引っ張りだこである。
     日頃から社員に愛情を持って、人を大切にする経営をしていると、リストラもやりやすい。
     社員にハードワークをさせる理屈を社長は用意しておかなくてはならない。
 
要旨としては、そういうスピーチだった。
ポジティブ思考、現状肯定人生もここまでくると、スゴイとしか言いようがないですね。
 
不景気の波を受けて大変な人数の社員のクビを切らなくてはならなかった経営が、「失敗」ではなく、「大成功」として、会社のPRに使われているということです。
スピーチの最中に、そもそもそういう事態になったことについては、何も触れられることはなく、あたかも「今回は未曾有の不景気で、どこもそうなので経営者に責任はない」「迅速に行動してリストラできた我が社は優れた会社である」と言わんばかりです。
 
スピーチの中では「我が社は、日本的な経営で非常にいい風土を醸成している」と言っていましたが、やっていることは極めてアメリカ的であり、聞いていて苦笑するしかない辻褄の合わなさでした。
 
 
このような現状肯定が過ぎる経営は、大いに問題があります。
また同じような事態になっても、早めに人を切ればいいという認識でいることは明らかです。
 
失敗学で著名な、工学院大学教授、東京大学名誉教授の畑中洋太郎先生は「失敗学」という著書の中で、リーダーの資質と失敗について、「リーダーによって失敗は3倍違ってくる」と言っておられました。

労働災害の専門家によると、企業のトップが安全管理に意識して取り組んでいるか否かで、罹災率は3倍違ってくるんだそうですが、経験的に導かれたこの数字は、安全管理のシステム自体もさることながら、これを活用するリーダーの心構えひとつで、結果が大きく変えられることを意味していて、この法則が、組織の失敗を見る際にも、当てはめることができるというのです。
 
たとえば、優秀な山登りのリーダーと偽リーダーがいたとします。天気のいい日に2人同時に山登りの下見をさせた場合、表面的にはなにひとつ変わらないように見えても、「思考」はまったく違う展開がされています。
 
優秀なリーダーは、山を順調に進む間も「雨が降ってきたらここは危ない」「ここはルートが狭いから危険」「ここは転落の危険がある」などと、常に危険を想定した観察をしているものです。
一方、偽リーダーは、そうしたことをなにもせずに「オレは頂上まで行ったけど、たいしたことない。山なんて、こんな程度」と、すべてを理解したつもりで豪語するだけなのです。
 
思いつくかぎり失敗の可能性をつぶしていく「仮想演習」は、リーダーに欠かせないと、畑中先生はおっしゃいます。
 
これは実に重大な問題です。
権限委譲という言葉がありますが、社長がただの前向き思考人間でも危険だけれども、放任主義での安易な権限委譲も、実に危険だということです。
 
優秀なリーダーに、権限委譲を進めて任せていくことはいいけれども、偽リーダーに権限委譲を進めて任せていくと、大きな失敗を生む危険性が高いのです。
 
いかに危険の少ない経営をするか?は経営者の大きな条件ではないでしょうか。
その意味で、「失敗学」は経営者にとって重要です。


 
 
満を持したボクの初の著書です。いい感じに仕上がりました。
マングローブからヒントを得た生き方・働き方・経営の仕方を提案してます。
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この記事へのコメント
  • 田村満さま

    これはこれは田村社長ではありませんか。その節は誠にお世話になりました。ありがとうございます。コメントをお寄せいただきありがとうございます。謙虚に反省をして社員を犠牲にしない経営をしなければなりませんね。今後ともよろしくお願いいたします。

    Posted by 今野 誠一 | 2010/02/12
  • 今野先生の申される通りです。この社長さんは何か思い違いをしているようですね。

    Posted by (株)高田自動車学校田村滿 | 2010/02/12
  • SPKさま

    ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

    Posted by 今野 誠一 | 2010/02/10
  • なるほど。。。

    返信どうもありがとうございました。非常にしっくりきました。

    Posted by SPK(元匿名) | 2010/02/08
  • 匿名さま

    ポジティブシンキング、自己肯定、があまりにも過ぎるんですよね。リストラを上手にやったこと。リストラされた人が頑張っていることを自社のPRに使う根性には脱帽です。人への思いやりではなく、自分への思いやりの強い人はどこにでもいます。

    Posted by 今野 誠一 | 2010/02/07
  • スピーチをしている人は真摯さのかけらもないですね・・。

    トップが間違った方向へ行ってしまうと会社全体が間違った方向へすすみかねないので注意したいものです。

    Posted by 匿名 | 2010/02/06

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