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このごろ、THE BIG ISSUE JAPNが面白い。
第176号の特集はチンパンジーの生態の研究に関する記事だった。
『隣人「ちんぱんじん」と考える希望と絶望』タイトルからして面白い。
チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータン、そしてヒトは、霊長類のヒト科に属す。
とりわけ約600万年前に共通の祖先がいたチンパンジーは、ヒトとの全ゲノムの塩基配列の違いはわずか1.2%、ヒトにとって進化の隣人である。
チンパンジーの知性が人間に劣らず、むしろチンパンジーの子どもの瞬間的な直観像記憶は人間の大人よりもはるかに優れているという。これを明らかにした松沢哲郎さん(京都大学霊長類研究所)は、愛知県犬山市にある霊長類研究所や西アフリカのギニア共和国ボッソウで、チンパンジーの人間の比較研究をしてきた方。
松沢さんが、チンパンジーの研究を始めたのは、「チンパンジーという生き物に、この世界がどんなふうに見えているのか? チンパンジーから見た世界を研究したかった」からだ。
そんな松沢さんは、チンパンジーの子どもが人間の大人より優れた直観像記憶をもっていることを、「想像する力と記憶力はトレードオフの関係」と考えている。
「ぱっと周りを見た時に、この世界がどうなっているのか?イチジクの実がどこになっているのか? 敵がどこにいるのか? それを見分ける能力を彼らは何十万年もの進化の中で身につけてきた。けれど、チンパンジーは10年後自分がどうなっているんだろうとは考えない。たぶん明日のことも心配していない。彼らは、もっている知識、知性、柔軟な心のはたらきのすべてを“今ここに生きる”ことに使っている。ある意味すごく爽やかな人生を生きている」
「もちろん、目の前のイチジクがまもなく実だろう、その時に来よう、そういうことは考えていると思います。だから、未来が見通せないわけではないし、過去を覚えていないわけではない。だけど、ある幅をもった『今ここ』という世界を生きている。アフリカの森でいえば、600種の樹種があり、どれが食べられるかも知っている。チンパンジーは現実の世界を、人間よりももっと深く見ていますよ」
一方、人間は直観像記憶を失くすことで、想像する力を手に入れてきたのではないかという。
「想像するということは、目の前にないこと、100年前のことや100年先のことを考えたり、遠く離れた東北の被災者たちに心を寄せたりできることです。人間は言葉を使って、世界に意味をつけて読みとるように進化してきたともいえます。
重要なポイントは“言葉は知識をもち運べる”ことなんですね。たとえば悲しい現場を見たら、その経験をもって帰って言葉で話す。それを聞いた人は共感してさめざめと泣く。研究していて思うのは、落語、歌舞伎、一人芝居、小説、何でもいいんですけれど、芸術や芸能が持っている人を感動させる力のすごさです。言葉で説明でき、理解でき、共感し感動できる。それを一つの言葉でいえば、“想像するちから”ではないでしょうか」
長くなるので、省略するけど、この後で松沢さんは、大怪我をしたチンパンジーの闘病中の態度に驚いたというんだ。怪我がひどくて生きる気力を失くしてしまいそうな時に、元気でワンパクだった時と同じように遊んで、全然めげていない。胸を打たれるような新鮮な驚きで、松沢さんは思ったっていうんだ。
「チンパンジーは今ここの世界を生きているから絶望しないんだ」と。
もし人間が同じ状態になったら、簡単に絶望してしまうだろう。
「けれど、人間は想像する力があるから、絶望もするけれど、希望ももてるんです。ナチスのユダヤ人収容所で人々が次々と死んでいく悲惨な状況にあっても、生き永らえるんだという強い意志をもって、わずかな食べ物を食べ、眠れない夜も寝て、未来を信じて今を生きた『夜と霧』のV・E・フランクルのように」
この記事を読んで、考えることは2つあるように思った。
ひとつは、もう一度通り過ぎてきた、「もっている知識、知性、柔軟な心のはたらきのすべてを“今ここに生きる”ことに使い切って、爽やかな人生を生きること」をしてみたらどうか。そして、「今ここの世界を生きて絶望しない」生き方をしてみたらどうか。という、積極的退化説だ。
これは、混迷の時代、激しい競争の時代で、未来予測にやっきとなっている現代人へのアンチテーゼとして、実に魅力的な生き方に感じられる。
もうひとつは、「想像するちから」こそ、人間に与えられた、他の動物にはない能力であり、この能力をさらに磨き、鍛え、駆使し、もっともっと人間らしく生きることを考えるべきだ。という、積極的進化説だ。
まっとうに考えれば、当然「積極的進化説」ということになるんだと思うんだけど、実に「積極的退化説」に魅力を感じている僕もいる。
ぼくはすぐさま、松沢卓郎氏の著書「想像するちから」を、注文した。
読了後、消化した上で、また何らかのことを発信したいと思っている。
この本の印税は、全額、ギニアで展開されている「緑の回廊プロジェクト」に寄付されるという。97年に始まった、ギニアのボッソウとニンバ山を隔てているサバンナに植樹して、チンパンジーの二つの生息地をつなぐという計画なのだそうだ。植樹しないと人間の畑が邪魔をして群れ同士の移動が起こらず、チンパンジーの保護に支障をきたすのだそうだ。
【今野誠一のパーソナルライフ更新情報】
漢字力白状伝:111007 「逸早く」「姑息」「憮然」
今日の日めくり:111007 笑顔
今野誠一の使っている日めくりカレンダーから気に入ったフレーズを、解説付きでお送りしているコーナー。
今日のテーマは「笑顔」。 笑顔は何ものにも代えがたい若さの元であると・・。
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