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2009.03.05企業理念
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昨日は、企業理念よりも、まずは「創業の精神」こそが重要で、それらしい企業理念の制定を機に、創業の精神を曖昧にしていきがちという話を書いた。
また同時に、創業からしばらくは企業理念は必ずしも必要としないのではないかという提案もした。
創業期というのは、実現したいことがあるから、リスクを犯してまでサラリーマン生活とおさらばして、起業するわけだ。初めから「人・モノ・金・実績・信用」が潤沢にあって創業するなんて恵まれた人は、大企業の子会社くらいのもので、ほとんど皆無。
何も無いところからの出発で、夢中でしかも必死になるしかないわけ。
ところが、数年して事業が軌道に乗り、この「人・物・金・実績・信用」ができてくるあたりで、悪魔が経営者のもとに忍び寄ってくることになる。これは例外なく100%そうだ。それは「慣れ」という慢心の悪魔であり、「拡大」という誘惑の悪魔である。
「慣れ」という慢心の悪魔と、「拡大」という誘惑の悪魔に勝てない経営者は、等しく「創業時の志は何か?」ではなく「今一番儲かる方法は何か?」というクエスチョンで頭を一杯にすることになる。
かくして、いつしか創業精神を忘れてしまい、儲けへの道をひた走る経営者へと、ほとんどの人が変身(これを人は本物の経営者への脱皮などとふざけた言い方をする)を遂げていく。時流に乗ることだけが経営の目的になってしまう。
ヒロタを再生した、21LADYの広野道子社長は、インタビューに答えてこう話していた。
「老舗企業は何代も続くうちに、創業時の精神を忘れてどこかであぐらをかいてしまう。まず初代の社長がもの凄く頑張るわけですよね。で、二代目になって守りに入る。そして三代目になっていろいろ違うことをやって潰れてしまう。ヒロタがまさにこのパターンでした。存続している老舗企業は、本業の基盤をしっかり固めながらも、そのうえで新しいことにチャレンジしています」
広野社長の話は、3代に渡る代替わりの過程でのリスクを言っているわけなんだけど、怖いのは一代の経営者の中にも、この三代の失敗は内在する危険性があるんだということ。
最初の数年馬車馬のように働き、ものすごく頑張って軌道に乗せる。
それで安心して、そこからの数年は守りに入る。
そして、守りに飽きたその後の数年で、突然色々なことをやり出して失敗し、潰れてしまう。
こういう三段論法的失敗はよくある話だ。
自分の会社のコア・ミッション、コア・テクノロジーを見失い、時流に乗るものを先に決めてそれに合う人をかき集めるという手法で、安易に乗り出しては失敗する企業が続出している。
21LADYの広野社長が再生させたヒロタの破綻原因は4つくらいあったと言われている。
1. バブルの時に工場に過大な投資をした
2. 阪神大震災で主力工場が被害に遭った
3. 喫茶店やパスタ料理のチェーン店など未経験の分野に積極的に進出した
4. 商品の種類を増やし過ぎて、肝心のシュークリームが売れなくなった
「シュークリーム」のヒロタが、なぜレストランやカフェに手を出したのか。
そして、どうして次々の商品の数を増やし続けてしまったのか。
ピーク時150もあった商品の数を、女性スタッフを中心とした評価委員会を発足させて、60にまで絞り込んで再スタートしたという。150の商品は社員でも全部を覚えられなかったらしい。
ピーク時150もあった商品の数を、女性スタッフを中心とした評価委員会を発足させて、60にまで絞り込んで再スタートしたという。150の商品は社員でも全部を覚えられなかったらしい。
このどちらも、上に書いた「拡大の誘惑」という悪魔のささやき以外の何ものでもない。
商品の種類が増えた理由は、ライバルがやって売れているものを、次々に導入して行った結果だったという。
人の失敗は笑い話に聞こえるが、実は程度の差はあっても、同じような愚を犯しているものじゃないだろうか。
「どこどこがやっている何々はヒットしているらしい。ウチ流にアレンジして取り入れてみてはどうか」という会話をした覚えのある人も少なくないはずだ。
「守成は創業より難し」という。
創業は何も無いところから開拓していかなくてはいけないという理由で大変なのは当たり前だが、実は軌道に乗った後にそれを守り維持させていくことのほうが実は難しい。
繰り返しになるが、「慣れ」という慢心の悪魔と、「拡大」という誘惑の悪魔に勝てない経営者が、「今、一番儲かるものは何だろう病」にかかり、創業の精神、志を忘れてしまうこと。
これが最大の落とし穴である。
【我が身を省みる】
偉そうに言っているマングローブも、創業の精神を忘れそうになったことが何度かあって今日に至っている。
マングローブの創業の精神は、「カーペ・ディエム(今を生きる)」である。
カーペ・ディエムとはラテン語で「その日の花を摘め」。
花の見頃、積み頃を誤るな、が転じて「今を生きる」という意味に。
創業時の社名は、この「カーペ・ディエム」であり、意味するところは二つあった。
ひとつは、我々がコンサルティングさせていただく企業の社員がことごとく、憂うことなく今を精一杯生きられる環境になるようなお手伝いをしていきたい、ということ。
もうひとつは、そのことを通じて自分たち自身を、今を精一杯充実して生きられるようにしていこう、ということだ。
この二つのことを目指す精神は、今も変わってはいけないのだが、社名も変わり、新たなる企業理念(人と社会のマングローブでありたい)が制定されるに至ってから、この「今を生きる」の二つの精神を知っている人もほとんどいなくなっているのが実情だ。
創業の精神である
・ クライアント企業の社員がことごとく、憂うことなく今を精一杯生きられる環境になるようなお手伝いをしていきたい、ということ。
・ そのことを通じて自分たち自身も、今を精一杯充実して生きられるようにしていこう
の二つを経営の、事業運営の判断基準とすることを忘れて、集った人ができることに合わせて事業を考えるという愚を犯していた時代もあった。
社員の強みを生かすという名の元に、今思えばずいぶん幅広い事業に手を出していたものだと、自嘲気味に振り返っている今日この頃だ。
かくしてボクの頭の中には、企業経営というものの核は企業理念ではなく、実は「創業の精神」であり、その時々の状況に合わせた企業理念との組み合わせで会社の方針を決めていかなくてはならないという思いが生まれることになったのだった。
長くなったので、そのことについては、この次に。
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