繋ぐ 経営者対談

2010.01.14 UPVol.8

株式会社ユニックス 水島達也会長 株式会社テレコメディア 関田勝次社長

『経営者に聞く!事業継承の真髄とは?』 (中編)

8回目となる今回の対談は、都市近郊エリアを中心に26店舗の美容サロンを展開する株式会社ユニックスの代表取締役会長 水島達也さんと、テレマーケティング業界のパイオニア、株式会社テレコメディアの代表取締役社長 関田勝次さんにお越しいただき、「事業継承」をテーマに語っていただきました。

  • 経営者対談

  • 経営者略歴

【事業継承と障害】
 
今野     先程のお二人の話のなかで、「誰が継承しても何かしらの問題が起きるも  
        の」ということでしたが、実行するなかでどんな要素が問題、もしくは障害
        になると想定されますか?
 
水島会長  一番大きいのは、社員が後継者をどれほど信頼できるかってことなのでは 
        と思います。今は、社員一人ひとりが私を見て仕事をしている。それは
        長年の積み重ねもありますから。しかし、組織のトップが代わることで、そ
        の目線の矛先を変えられるかどうか。
 
関田社長  それは私も含めて、現リーダーの忍耐力に掛っていると思います。あれこ
        れ口を挟みたくなったりすることもあるかもしれませんが、そこをグッと我
        慢して、新しいリーダーを立てていくようにしないといけないんじゃないで
        しょうか。
 
今野      水島さんのところは、後継者の方と社員の方々との接点はあるのです
        か?
 
水島会長  以前に全店舗の店長が集結する店長会議に出席してもらい、その席で
        紹介したことがありましたが、店長たちはピンと来ていない反応でしたね。
        「水島会長、“次のリーダーは・・・”って何を言っているの?」という不思議
        な顔をしていたかな。
        それは、まだ私がピンピンしているからでしょうね(笑)
 

         


関田社長  入社されて社内でのコミュニケーションの回数が増えていけば、自ずと社
        員も実感していくのかもしれませんね。
 
今野     コミュニケーションという点でいうと、創業社長と継承者とでは、社員の方
        々への接し方は違ってくるんでしょうね。
 
関田社長  それは当然違う面をもあるでしょうね。創業社長の場合、社長は一家の
        親父で、社員は子供たちのような関係になります。
 
        私も例外ではなく、社員一人ひとりは我が子のように接してしまっています
        から。昔からいる社員となると、平気で呼び捨てになっちゃうしね。社員の
        結婚話は我が子の時と同様に嬉しさがこみ上げてくるし、子どもが生まれ
        たなんて話を聞いたら、孫が増えた気分にもなる。それはオーナー社長
        ならではの感情でしょうね。
 
        しかし、事情継承する人はそういった感情を持ちにくいかもしれません。
        それは、やはり作られた組織の中に加わるという形でスタートするので、
        気持ち的に直ぐに一家の親父になれないのは当然のことでしょう。
 
【現場を知る】
 
今野     それでは、社員との信頼関係を強固にするポイントでどのようなことが
        重要だと思われますか?
 
水島会長  まずは、後継者が現場目線を持とうとどれくらい努力するかだと私は
        思っています。経営者だからといって、オフィスに籠り椅子に座って
        戦略を考えただけでは駄目なんですよ。
 
        例えば、ある店舗に様子を見に行くとします。店内をただウロウロしている
        とお客様も不審に思うだろうし、本人だってきっと居心地が悪い。だから、
        箒を持って床に落ちた髪の毛などの掃除をしながら、見学をするのが一
        番良いんです。そうすれば、お客様の様子やスタッフの会話を耳にし、戦
        略に必要な情報を得ることができる。また、掃除してくれればスタッフだっ
        て助かるはずだし(笑)、一石二鳥ですよ。
 
今野      なるほど。
 
水島会長  ただ、私の場合は、自分が現場に立った経験があるからこそ普通に
        できることで、異業界から来た人にとって簡単かといったら、そうじゃない
        のかもしれない。でも、絶対実践したほうがいい。
        リーダーの一挙手一投足
を社員は見ていますからね。
 
関田社長  無理なく実践できたら、それは素晴らしいことだよね。現場を知る=お客
        様の変化を感じる、社員の気持ちを感じ取ることができるから。
 
今野     しかし、異業種から来た方の場合、業界での実務経験がないから、
        現場に入っていくこと自体がかなり敷居が高いですよ。
 
関田社長  そうですね。現場をよく知ろうという姿勢は持たないとね。きっとそれは、
        個人的なプライドを一旦捨て去れば可能なんじゃないでしょうかね。
        「経営者がいまさら現場業務なんて・・・」なんて気持ちが少しでも心の
        片隅にあるなら、それを取っ払ってしまえばいい。水島さんも同じだと思い
        ますが、創業社長には個人的にプライドってものがあまりない気がするん
        です。
 
        一方で、会社に対するプライドはある。それは、会社を守るためのプライド
        です。テレコメディアが世間から馬鹿にされたら、はらわたが煮えくりかえ
        るほど怒るだろうし、非常に悔しい思いをする。

taidan8_08.jpg
水島会長  関田さんのおっしゃること、非常に分かりますね。
 
関田社長  会社を守るためなら、土下座だってしますし、何が何でも守り抜こうと
        する。だって、テレコメディアを選んで働いてくれている従業員が1000人
        いたとしたら、その後ろには1000人以上の生活があるってことでしょう?
 
        従業員の働きがあるからこそ、私だってご飯が食べられているんだと
        思うと、私個人のプライド云々よりも、この1000人の生活を守ることの
        方が何よりも大事。社員の名誉を守るためだったら何だってできちゃうん
        です。きっと今野さんも同じ思いじゃないですか?
 
今野     そうですね。リクルートにいた時と今こうしてマングローブの社長でいるの
        とでは、心の持ちようが全く違います。
 
水島会長  きっと創業社長にとっては当たり前の感情なんだと思います。店舗で箒を
        持ったり、タオルの準備をするとか、パーマ用のロットを洗うとか、当たり
        前のことで、それが社員や会社のためだったら何だってできるんですよ。
 
        何だかんだ言い訳をして実践しないのであれば、継承しても絶対に成功
        はないと思う。それは社員からの厚い信頼を得られないからね。
 
関田社長  とは言っても、事業を引き継いでいくものが、いきなり企業としてのプライド
        を持つというのは難しいとは思います。しかし、継ぐからには早い段階で
        個人のプライドから企業としてプライドにシフトしていってほしいという願い
        はあります。
 
今野     今のようなお話は、まさに継承を間近にして臨場感のある方にしか言えな 
        い言葉ですね。成功へと繋げる第一歩は、まずは現場を出て、社員との
        信頼関係を作るために具体的な行動に出るということに尽きますね。
 
関田社長  そして一方で、私たち譲る側の努力も忘れちゃいけないと思います。
        譲ると決めたからには、あれこれと口を挟まず、任せることに徹しなけれ
        ばいけないと。
 
        自分ならこうするだろうと思っても、まずは継承する人の考えを一旦全て
        受け入れる。仮に、過去の私の経験からうまくいかないと分かっていても、
        最初から駄目だと言わないようにする。仮にある場面において自分なら
        こうすると思っても、彼の考えを全部受け止める。私が彼の考えを始めか
        ら否定してしまうと、結局彼は実権のないナンバー2になってしまいます
        から。
 
        だから、全部やらせるのです。橋本によく言うのは「とにかく、失敗しろ」
        と。「失敗してもお前の会社、成功してもお前の会社。会社というものは
        経営者で決まるのだから、もし自分の意思で失敗したならそれはそれで
        いい。ただし、万一会社が潰れそうだという時には私は介入させてもらう
        よ」。
        この1年間はそんなスタンスでいようと心に決めています。
 
【新しい経営スタイルを見出していく】
 
今野     創業者と代目とは、育ってきた時代も環境も、さらに経験も違うと思いま
        すが、経営スタイルについてはどのようにお考えですか?
 
関田社長  経営スタイルを真似る必要は全くないと考えています。先日ね、この春入
        社予定の学生さんの内定式を行ったんですが、その彼らが定年退職する
        のは2050年。2050年といったら、21世紀のど真ん中。もちろん、私は
        もうこの世にはいない(笑)。
 
        今はまだ2009年だから、なんとなく20世紀の懐かしさを引きずっている
        けれど、後
10年もすれば21世紀の空気。世の中はすっかり様変わりし
        ているでしょうね。
 
水島会長  そうそう、美容院でもシャンプーが液体でなくなっているかもしれないです
        ね(笑)。そんななかで、いつまでも同じような経営スタイルや考え方を
        引きずっていては、時代に取り残され、企業の存続はまあ不可能だと
        思います。

        

今野     
21世紀の半ばとなると、間違いなく時代は大きく変わっていますね。
 
水島会長  だって19世紀の生活を考えてみると、今では信じられないことばかりで
        しょう。移動手段は馬で、電気もない。服だって着物ですよ。それと同じよ
        うに、
20世紀は当たり前と思っていることが21世紀も同じだと思っていた
        ら大間違い。
19世紀にあったものは20世紀にはもうないように、20世紀
        にあったものはもう
21世紀にはないのです。
 
        その点に気がついていれば、後継者は次の時代を見据えた戦略を考え
        て、決断、実行していく必要がある。つまり、2050年のユニックスは、
        2009年のユニックスとは全く異なる事業体になっていなければおかしい
        ということなんですよ。
 
今野     先程水島会長が、次はグローバルの視点を持った人材をということをおっ
        しゃっていましたが、正に生き残るための手段でもあるということですね。
 
水島会長  そういうことです。創業者の思いを伝承することはあっても、戦略や経営
        スタイルにまで固執しすぎてはいけないということなのです。
 
今野     とはいえ、なかなかそう思えない経営者も世の中には少なくないのでは?
        と思いますが。
 
関田社長  しかし、事業を次の世代に渡したいと思うなら、いつまでも自分の成しえた
        ことや今の姿に固執しすぎるのは良くないと思います。それはお客様の
        変化を感じ取ることができなくなってしまうからです。
 
        お客様のニーズを予測した戦略や展開を考えていく。これは企業経営で
        は当たり前のことですよね。しかし、それができるのは、正にその時代の
        経営者だけ。先程水島さんがおっしゃっていましたが、お客様の変化を最
        も感じられるのは現場でしかないんです。だからこそ、組織のトップに立っ
        ても、定期的に現場に出ないといけないわけです。
 
今野     なるほど。それが先ほどおっしゃっていた現場に出ることの重要性に繋が
        るんですね。
 
関田社長  最近目にして非常に印象に残ったある記事の話をしていいですか?
        
トヨタ自動車株式会社の社長、豊田章男氏についての記事です。販売台
        数の低迷は最近の若者の車離れが原因ではないかという記者の問いに
        対して、「若者が車に興味を持たなくなったわけではない。トヨタがお客様
        の方を向いていなかったんです」と返答されていました。私はその記事を
        読んで「豊田章男氏はすごく勇気ある男だなあ」と。世界の一流企業トヨタ
        のトップが素直に「自分たちがお客様を見ていなかった」と認めるとはなん
        と凄いことかと。
 
水島会長  つまり、常にお客様の変化を掴むために、現場を大事にするのは基本中
        の基本だということですね。
 
関田社長  そういうことです。そして我々がどれだけ若い世代に事業を託せるか。
        「頼んだぞ」と言えるかどうか、そこは創業社長の力量に掛かっているん
        です。


ご意見・ご感想をお待ちしています

経営者略歴

株式会社ユニックス 代表取締役会長
水島達也氏 (Tatsuya Mizushima) 

1945年 東京生まれ
1963年 大宮商業高校卒業
1975年 株式会社ユニックス設立
同年  代表取締役に就任

水島達也会長のインタビューを読む

株式会社テレコメディア 代表取締役社長
関田勝次氏 (Katsuji Sekita) 

1949年6月 生まれ
1973年3月 明治学院大学経済学部商学科卒業
1973年4月 株式会社ホテルグランドパレス入社
1980年3月 同社退職
1981年5月 テレコメディアの前身株式会社ワコーを設立
1983年1月 株式会社チェスコム秘書センターを設立
1998年3月 社名を株式会社テレコメディアに変更

関田勝次社長のインタビューを読む

このページのトップへ戻る

繋ぐ 経営者対談

各コンテンツ 最新記事

ブログ今野誠一のブログ
設立記念日
語る経営者インタビュー
“子供たちの無限の可能性を救いたい” NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク
理事長 松井秀文 氏
繋ぐ経営者対談
経営者に聞く!事業継承の真髄とは? 水島達也 社長 × 関田勝次 社長
集うイベント・セミナー
強い組織、善い組織とは? NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク 
理事長 松井秀文氏 氏
今野誠一のパーソナルライフ今野誠一のパーソナルライフ
第35回 体脂肪率ダウン合戦(第26週)[体作り奮戦記]