繋ぐ 経営者対談

2008.05.20 UPVol.6

日本プランニングスタッフ株式会社 小林 隆社長 株式会社メイプルリビングサービス 加藤 照美社長

『空間をクリエイトする経営者を繋ぐ』 (前編)

挑戦を続けるベテラン経営者のお二人に経営者のあり方から互いの事業の接点まで、率直に語り合っていただきました。

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【社員を大切にする経営】
◆加藤社長
今野社長からお声がけいただきましたが、聞けば恐れ多くも小林社長 が私に会いたいとおっしゃってくださったんだそうですね。ありがとうございます。実に光栄に思いました。
◇小林社長  
そうなんですよ。インタビュー記事を興味深く拝見して、加藤社長の人間味あふれる、人としての優しさにあふれるお人柄を想像しました。特に「愛する人たちを幸せにするために働く」という企業理念には魅力を感じまして、社員への愛情のあふれる経営者だなあと感心いたしました。それで、一度お会いしてみたいと思ったわけなんです。
◆加藤社長
いやあ、そうおっしゃっていただくと、うれしくもあり、恥ずかしい感じもするんですが。理念というものは「追い求めるもの」ですから、実態がそうなっているかというと自信のないところもありまして・・・。ただ、ポリシーとして、何よりも愛する社員のために会社をよくしようという姿勢は持っているつもりです。
MN_tunagu006_pic_01.jpg◇小林社長  
素晴らしいですね。社員を愛せるかどうかは、経営者として非常に大切なことだと思います。
◆加藤社長
優しさの度が過ぎて少し甘いところがあるのでは、そんな反省点があります。経営者の自分が甘いと、組織全体に責任への甘さが出てきて、風土によくない影響を与えるのではないかと反省しているんです。
◇小林社長  
加藤社長が甘いんですか? 信じられませんね。押さえているところは押さえているように感じますよ。
◆加藤社長
これは半分冗談ですから、そのつもりで聞いてほしいのですが(笑)・・・。私は、ずっと野球少年だったものですから、今少年野球チームのコーチを務めてるんです。
毎年、新しい選手が入ってくるたびに、何しろ集まってくれる選手がかわいくてしょうがない。「一人ひとりなめてしまいたいほど、かわいい」などと口走ったら、選手のお母様方に思い切り不評を買ってしまったことがあります。
◇小林社長    
思うのはかまわないでしょうが、口に出したのはまずかったかもしれませんね(笑)。しかし、お気持ちはすごくよくわかりますよ。実は私も小学生チームのコーチをやっていたことがあるんです。1週間に1度程度の練習だったんですが、前の週よりも確実に上手になっているのがわかるんですよね。頑張って成長していっている姿は本当にかわいいと思うし、もっともっと頑張ってほしいと応援する気持ちが湧いてきますね。リーダーにとっては、メンバーの成長する姿をかわいいと思えることは、大切なことです。
◆加藤社長
そのとおりだと思います。一方では、会社の歴史を遡れば相当厳しい時期もあったわけなんです。そんな時期を思い出すと、なんとか社員に苦労をさせないですむ安定した会社にしたいという気持ちで頑張ってきたところもあります。「社員への責任」ということなんでしょうね。 MN_tunagu006_pic_02.jpg
当社は、マンションやオフィスビルの設備の管理からメンテナンス、さらには内装や修繕工事などのサービスを提供している会社です。今から7~8年前に、ワンルームマンションを月に70現場くらい担当していた時期がありました。これは体制が整っていない当時の当社にとっては、限界を超える規模だったわけなんです。一番大変なのは、職人さんのスケジュール調整と管理です。例えば、クロスを貼る職人さんと、一番最後の工程である部屋のクリーニング業者さんが鉢合ってしまったら、狭いワンルームマンションでは両立できないわけです。少しの狂いが生じると立ち行かないという正に極限の状態でした。
そんな時に、社員が一人、現場で肋骨を折るという怪我をしてしまいまして。普通であればさっさと入院するか、手当てをして休んでいないといけないわけですが、状況を理解している彼はそんな状態でも休まずに頑張ってくれたのです。
涙が出る思いでした。私も缶コーヒーを手土産に現場に通いました。その現場がなぜか匂うことに気がつきました。その匂いの原因はなんと、社員の体臭だったんです。入浴する時間もないほど働いているということなんですね。風呂よりも1分でも寝ていたいというくらいの状況でした。そんな中で社員だの社長だの言っていられません。私自身もひとつのミスもない手配をし、現場管理をしていかないと破綻するという緊張感で一緒になって仕事をしていました。そんな風に徹底的にやった結果、私の体にも異変が現れてきたんです。過労で右手があがらなくなってしまった。しかし、社員や職人さんが限界を超えて頑張っていることはわかっていますから。自分だけ弱音を吐いているわけにはいかない。自分も手が上がらないくらいのことで休んでいるわけにはいかない。そう思って、反対側の手で懸命に仕事をしていたものでした。
◇小林社長   
いやはや、ものすごいご経験ですね。あまりの迫力にお話しに割って入ることができませんでした。
◆加藤社長
そういう苦労を二度と社員にさせてはいけない。会社を成長させて、安定した状態で、みんなで楽しくやっていきたい。協力してくださる会社の方々も巻き込んで、幸せを感じながら仕事をしたいと強く思うようになりました。まだまだ理想の状態には遠いと思っていますが、一歩一歩進んでいきたいと思っています。 

【幹部の存在】
◇小林社長  
会社というものの存在意義にも関わる大事な話ですね。利益だけを追求するのではなく、関係する人たちすべての幸せを追求する。素晴らしい理念ですよ。どんな事業であっても、社員を雇用し、世の中に何かを提供し続けている限り、社会的責任が生じるわけですよね。そうした企業として追求すべきものを経営のDNAとして、誰かに引き継いでいくことは非常に重要ですね。
◆加藤社長
そう思いますね。社員思いであることだけはどこの社長にも負けない自信があるんですが、将来を託す人材となると、まだまだやりきれていないというのが実態なんです。助さん、格さんのような形で両脇を固めてくれる人がいれば、色々な戦略や、社内の施策も中途半端で終わることもなく、もっともっといい会社にできると思うんですよ。いい社員が揃っているのですが、会社を引き継いでもらえるかどうかということでいくと、まだまだ頑張ってもらわないといけない状態です。現在の大きな課題だと思っています。
小林社長のところは、社長の片腕として引き継いでいきたい人は育っているんですか。
◇小林社長  
私が昔勤務していた会社で一緒に仕事していたことがあり、30年間恋焦がれて、やっと4年前に合流してくれた男がいます。従前からいたスタッフを頼りにしていなかったわけではないのですが、デザイナーとしての腕とマネジメントはまた別物ですし、一人ひとりの志向ということもあると思います。すべてを任せられる彼の存在があって、経営のレベルがまた一段上がることを期待しています。彼のありがたいところは、イエスマンではなくて、社長である私に言いたいことを言うということも役割のひとつだと考えてくれているところですね。
◆加藤社長
非常にいい状態なんですね。実に見習いたいことだと思います。社長というのはとかく裸の王様になりやすいものですよね。そうした鏡となってくれる幹部がいることは経営上非常に大きなポイントです。指示されたことをただ黙々とやってくれるというのは、その時はありがたくても、長い目で見ると成長がない。色々と考えてくれる幹部でいてもらうためには。社長自身の態度も重要ですよね。
◇小林社長  
そう思いますね。社長である私が指示したことを忠実に実行するということではなくて、「こういう違う見方があるのではないか」「実はこうしなくてはいけないんじゃないか」などと、色々な意見を付け加えて返してくれるのはありがたいと思っています。サラリーマン的体質ではできないことですから、いつも経営的視点を持ってしていることが必要ですし、こちらも本気でいかないと切磋琢磨し合えないですよね。お互いを高め合うと言いますか。それと、聞く姿勢にはいつも意識が必要ですね。加藤社長が裸の王様という言い方をされましたが、正にそのとおりで、自分の考えに固執して頑固になっている時は自分では気がつかないことも多い。どうしても上下関係に縛られてしまうのが組織の中でのコミュニケーションですから、上にいる側で聞く姿勢を意識していかないとよい方向にいかないんですね。
◆加藤社長
力関係がありますから、議論の中でも本心では納得していないのに合わせて行くことが増えると、組織はおかしくなっていくんでしょうね。そうしたことに経営者としてはストレスを感じてしまうわけですが、経営者である前に人間としての謙虚さを持ち合わせていないといけないと感じました。
さっきの片腕の方の話に戻るんですが、小林社長に言いたいことを言ってくれる耳の痛い存在としてありがたいだけではなくて、社員の声を代弁してくれる、という存在ではありませんか。お聞きしているとそうしたバランスも持っている方のようですね。
◇小林社長  
そういう面もありますね。社員の気持をいろいろと聞いてくれています。外から来た人間という立場ですし、大企業にいたという立場もありますから、意識して自分のスタンスを変えてくれていると感じています。その点は立派ですね。メンバーと一緒に食事してくれたり、彼らの意見と自分の意見をバランスよく自分に伝えてくれるようです。
そういう意味でもありがたい存在ですね。実は私と彼のコンセプトを比べて、彼のほうが絶対いいと思っているんですよ。仕事は常にいいやり方をしているし、人間的にも厳しさを持っています。そして何よりオフィスインテリアの世界に絶対的に必要な、センスやクリエイティビティの部分においても信頼しています。
ところで、MG-NET+(マグネット・プラス)の加藤社長のインタビュー記事で、加藤社長のところも、いい幹部が育っている、というコメントがありまして、うらやましく拝見した記憶がありますよ。
【チームビルディング】
◆加藤社長
育っていますね。一人ひとりで言いますと確実に育ってきていると思っていますし、大いに期待しているところです。しかし、誰かが抜きん出て、という状況ではないですね。それが物足りなくもあり、ウチらしいところかとも思いますが。一人ひとりは非常によく働いているし、成長もしてきていると評価しているんですが、チームの機能としてみた場合には、まだまだ目指す姿には遠いと言わざるをえません。もう一段成長していくためには、何が不足しているのかと模索しているところなのですが・・・。将来の会社の目指す姿を共有しているつもりでも、まだまだ私が話しきれていないんじゃないか。上手な伝え方ができていないんじゃないか。社長と幹部、リーダークラスの信頼関係をもっともっと確実なものにして、衝突を恐れないで社長だけでなく、お互いが言い合える風土はもっと作っていかなくてはならないのだろうと思っています。思っていても実行することは難しいですね。
◇小林社長  
チームとしてどう強くするかがポイントなんですね。お互いの信頼関係の下で、衝突を恐れないで言い合える風土が必要という点には共感します。いつまでも社長だけが吼えている状態だと、強くなれない。次第に社長ではなく、リーダー同士がコミットメントを高めて、お互いの責任を時には追求し合うくらいになってもらえると強いと思いますね。
◆加藤社長
そのレベルまでには、現実は程遠いと言わざるをえませんが、目指していきたいですね。最終的には、全社の業績への貢献に全員が意識を持つ組織づくりをしていきたいのですが、現時点ではお互いに信頼し合える風土づくりで足踏みしている感も否めません。
◇小林社長  
分かっていても組織作りはなかなか難しいということだと思いますが、加藤社長の取り組みをお聞きしますと、着実に前進されているように思いますよ。

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経営者略歴

日本プランニングスタッフ株式会社 代表取締役
小林 隆氏 (Kobayashi Takashi) 

昭和46年  株式会社イトーキ入社
昭和60年  日本プランニングスタッフ
         株式会社を設立
平成 2年  社団法人ニューオフィス推進協議会
         「ニューオフィスモデル100選」中に
         4件選定。
平成13年  第14回「日経ニューオフィス大賞」
         経済産業大臣賞受賞。

        

小林 隆氏のインタビューを読む

株式会社メイプルリビングサービス 代表取締役
加藤 照美氏 (Kato Terumi) 

1961年 東京生まれ
1985年 獨協大学中退
1985年 株式会社ニッテイ入社
1993年 株式会社メイプルリビングサービス設立
       同代表取締役就任

加藤 照美氏のインタビューを読む

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