繋ぐ 経営者対談

2009.06.18 UPVol.7

オリーブの丘 ひぐち まり社長 株式会社ヒューマネクスト 浜本 亜実社長

『スペシャリストに学ぶ、”おもてなし”の本質』 (前編)

7回目となる経営者対談。今回は、ウエディングプロデュース界の草分け的存在であり、おもてなしのスペシャリスト、オリーブの丘 代表 ひぐちまりさんと、企業価値を高めるサービスブランディングを手掛ける、株式会社ヒューマネクスト 代表取締役 浜本亜実さんをお迎えし、「おもてなし」をテーマに語っていただきました。

みなさんは、“おもてなし”についてどのようなお考えをお持ちですか?“おもてなし”に正解はありませんが、今回の対談を通じて数々のキーワードが飛び出しました。そのキーワードを意識することで、自己流の“おもてなし”により深みが増すのではないでしょうか?

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【おもてなしとは関係づくり】

 
今野       今日はお越しいただきまして、ありがとうございます。今回のテーマは
          「おもてなし」です。マングローブでは「
30ブロック経営」というもの
          を実践していまして、そのなかに「来訪者を自然にもてなす」という
          テーマがあります。「自然にもてなす」とは言っても、行動マニュアル
          があるわけではなく、個々人の価値観に委ねられています。
          おもてなしはどうあるべきか?と考えていたら、お二人の顔が浮かび
          まして、“おもてなし”をテーマに対談していただこうと勝手に企画して
          しまいました(笑)。
 
ひぐち社長   それは嬉しいですね、ありがとうございます。
 
浜本社長    こんな素敵な機会を与えて下さり、本当にありがとうございます。
          今日のこの会をとても楽しみしていました。
 
今野       インタビューの際にもお伺いしましたが、ひぐち社長のおもてなしの原
          点は、
外資系銀行に勤務されていた時代のパーティ文化でしたよね?
          その後、転
職先の不動産会社でもレセプションの企画や運営するよう
          な仕事を経験さ
れたりと、20年近く“おもてなし”に携われていますね。

ひぐち社長   そうですね。気がつけば、そんなに月日が経っていたという感じです。
          銀行に勤めていた時は、社内に外国籍の方もいらして、週末には上司
          や同僚からホームパーティーに招待していただく機会が多かったんで
          す。また、会社主催のパーティも年に数回開催され、プライベートから
          オフィシャルのものまでパーティというものが一年中身近にありました。
          クリスマスパーティでは、男性はタキシード姿、女性はロングドレスと
          いう方もいて、驚いた記憶があります。
 
          その後転職した先の不動産会社でも、国内外の様々な規模のパー
          ティに参加したり、こちらが主催したりする機会がありました。一番
          心に残っているのは、アメリカ元大統領のジミー・カーター氏をお呼び
          したプライベートレセプションです。
 
今野       そうすると、西洋的なおもてなし流儀が無意識のうちに身に付くような
          環境にずっといらしたわけですよね。
 
ひぐち社長   自分が希望したわけでは決してないんですが(笑)。欧米文化の中に
          あるパーティーの成り立ちは、人間関系を良好に保つための手段でも
          あったんじゃないかと私は思うんです。欧米で『人が一同に介する』
          場合、その前提は『皆違う』です。何人か集まれば、両親や祖父母の
          国籍が違うというのは特別なことではありません。その『違う』人達が
          お互いを理解し、よりよい関係を創るためにも、マナーやパーティ文化
          が求められたのでしょう。
 
浜本社長    要は、人間関係作りの場として存在していたわけですね。
 
ひぐち社長   お二人もご経験があると思いますが、欧米人は、エレベーターに乗る
          際に「Hello!」と声を掛けたり、笑顔を投げ掛けたりしますよね。実は、
          あの行為も『違う』もの同士が「私はあなたの敵ではありません」と
          伝える事で良好な関係作りをする為ではないでしょうか。
 
          エレベーターは密室ですから、逃げ場のない空間になります。
          相手から不審に思われないように、声を掛けることで、安心感を持っ
          てもらい、それが自分の安全につながる。日本人にその習慣がないの
          は、日本で一同に人が介する場合は『皆一緒』が前提だからでしょう。
          皆一緒、自分と同じ、だからお互い通じ合えるし、安全なのだという
          ような考えが根底にあって。とは言っても、最近は安全でなくなって
          いるような気はしますけれど。
 
今野       僕はオフィスのエレベーターに乗る際、人と乗り合わせる時は挨拶
          だけはするようにしていますよ。でも、返答がなかったり、目が合う
          こともないと、挫けてしまいそうになりますが(笑)。何かのご縁で同じ
          ビル内で働いているのだから、挨拶程度のコミュニケーションは図り
          たいなあと。ビル全体を巻き込んだ文化祭を開催できたら面白いだろ
          うなあ、なんて時々考えたりしてはいるくらいですが。

経営者対談
浜本社長    今野さんがおっしゃっている、挫けてしまいそうな気持ちとても理解
          できます。つい私自身も心のどこかで相手からの反応を期待してしま
          うことがあります。でも本来のあるべき姿としては、相手の反応に関わ
          らず、自分はいつもと変わらずにただひたすら続ける姿勢なのかもしれ
          ませんね。自分がそうしたいからするということ。その姿勢が気持ちと
          なって自然と相手の心に届くのかもしれません。
 
ひぐち社長   私も浜本さんに同感です。人間関係が昔より希薄になっていると感じ
          ているからこそ、それに気付いている人が一歩踏み出すことで状況が
          変化すると信じていますから。
 
今野       なるほど。ところで、浜本社長の会社は、若手社員の育成に特化した
          事業を展開されていると思いますが、挨拶のイロハを教えたりするよう
          なマナー研修なども行っていらっしゃるんですか?
 
浜本社長    最近では、そういった研修よりもサービス業界のお客様のクレド作り
          やフォロソフィー作りのお手伝いをさせていただく仕事が大半を占める
          ようになってきています。というのも、「挨拶はこのようにしてください」
          と教えることよりも、その行動の先にある意味や意義を理解できなけれ
          ば、本当の意味での行動、自発的な行動につながりにくいと思うから
          です。本人が自らやろうとする意識を持たせるためには、どうしたら
          いいのということを考えることが大切だと思っています。
 
今野       そうでしたか。その企業が何を大事にしているのかを明らかにして
          いこう、ということですね。
 
浜本社長    はい。利用者や消費者であるお客様に商品やサービスを通じて、
          “企業の想い”を届けることが大切ですから、その企業ならではの
          “想い”を追求し、きちんとブランディングすることが私たちの仕事だと
          考えています。商業施設や小売業が主なお客様ですので、まずは
          サービスを利用するお客様に直接お話を伺って生の声を集めたりしま
          す。さらに現場スタッフの方、そして企画部や経営幹部の方々にインタ
          ビューをすることもあります。
 
ひぐち社長   インタビューでは、具体的にはどんなことを聞かれるのですか?
 
浜本社長    サービス利用者に対しては、接客態度や企業のブランドに対する
          イメージ、その企業に求めることについてなどをインタビューしていま
          す。サービス利用者の声を直接聞き、会社が大事にしていることを
          明確にしていくという過程で、意外にも働くスタッフの目線がこれまで
          と大きく変わったりする場面はよくあります。
 
ひぐち社長   その過程でどんなことを大切にしていますか?
 
浜本社長    スタッフ一人ひとりが想いを共有したうえで、サービスということを
          自発的に、かつそれが常に行われるような仕組みづくりに力を注いで
          います。内発的モチベーションにどうつなげるかということなのですが、
          究極は「この人のため自分が何かしてあげたい」とか「自分がこうした
          い」という思いが湧き出ることだと思うんです。
 
          それには、本人が幸福を感じていて、健やかであることが大切なこと
          だと私たちは考えました。結局人は自分自身が幸せでなければ、人を
          幸せにしたいという気持ちの余裕は生まれてきません。今食べた物が
          すごく美味しかったから人にも食べさせてあげたいな、とか、旅を十分
          に楽しんでいるからこそ、これをお土産に持っていくと喜んで貰えるだ
          ろうなとか考えます。ですから、クレド作りには「●●をしましょう」という
          ような半強制的な内容を盛り込むのでなく、まず使うスタッフ一人
          ひとりの立場にきちんと立つこと、つまり、このクレドがあることで、
          一人ひとりの充実度や幸福度が増すようなことを前提として考える
          ことが重要ですとお伝えしています。
 
          また、ブランドを構築していく上で重要となるのが、その会社の“らしさ”
          を見つけ出すことですね。それは私たちができることではなく、そこで
          働く人すべて、経営者も幹部もスタッフもがお互いに語り合い、ストー
          リーを作り上げていく。その過程でスタッフの心がひとつになる、それ
          を私たちがお手伝いしていくのが仕事なのです。
 
経営者対談
ひぐち社長   浜本さんのお仕事は、お客様の深い部分まで入り込んでいらっしゃる
          んですね。すごくやりがいのあるお仕事なんじゃないですか?
 
浜本社長    とてもやりがいがあります。様々な業界のお客様と日夜考え抜くこと
          で、新しい世界観や人間心理などに出会えることは本当に幸せです。
 
今野       お聞きしていてふと思ったのですが、人をもてなそうと意識することは
          決して悪いことではありませんが、そうやっている自分が楽しいと感じ
          ている、もしくは嬉しいなあという気持ちが根底にないと駄目なのかな
          とも感じますね。
 
浜本社長    正しい答えは他にもあるのかもしれませんが、「ホスピタリティをしよう」
          とか「サービスをしよう」と意識した時点でそれはもうホスピタリティや
          サービスではなくなるような気がしています。だから、「サービスしよう」
          と無理して思われるよりも、「今日は来て下さってありがとうございます」
          という心からの気持ちや姿勢がこちらに伝わるようだったら、たとえ
          言葉使いを間違えてしまったとしても私は嬉しい気持ちになります。
 

【おもてなしは生き方そのもの】

 
ひぐち社長   サービスには、マニュアルがあってテクニックややり方が基本にあると
          思うんですね。でも、『おもてなし=その人の生き方』だと私は思って
          いるんです。その人なりの生き方や考え方、価値観が表れるのが
          おもてなしであると。普段から自分が人に対して行っていることを、
          仕事では、お客様に行う。それは自分がそうするのが好きで、嬉しい
          から。普段の生活では、ろくに挨拶もしないのに、仕事でお客様の前
          だからとドアを開け、笑顔で「いらっしゃいませ」というのは、なんか
          不自然な感じがしますよね。
 
浜本社長    まりさんの「おもてなしは生き方そのもの」ってすごく素敵な表現
          ですね。

ひぐち社長   ありがとうございます。私がウエディング業界に身を置いているから
          そう思うのかもしれませんが、
サービス業はプライベートと仕事を分け
          るのは非常に難しいと思うのです。なぜかというと、「この時間は仕事
          としておもてなしをする時間、ここからここはプライベートです」という
          線引きができるものではないから。
 
          例えば、仕事を通じておもてなし力が磨かれる瞬間というのは、自分
          がかかわった事でお客様が幸せな気分になられたとか、たくさんの
          笑顔を見せて下さったとか、この店に来て良かったと思って頂ける
          こと。つまり、自分がそれだけ愛される人間であり、必要とされる
          人間であると認識することで、おもてなし力が向上していくんだろうと。
 
          ですから、普段の生活の中でも、周囲の人に愛されたり、あなたと
          いて嬉しいと、相手から喜んでもらう経験を数多くすることで、それを
          自然に仕事の中に活かしているだけなんじゃないかと思うのです。
          それを仕事だからとか、プライベートだからと言うことなく、ごく自然に
          実践できるのは最高ですよね。
 
今野       いいですねえ、そのような考え方。
 
ひぐち社長   私は、ある時からウエディングプランナーという“仕事”ではなく、
          ウエディングプランナーという“生き方”を選んだんだと思うようになった
          んです。ある役者さんが、『楽屋が芝居に出る』と言われたのを聞い
          て、なるほどと思ったことがあります。結局は、私の日常がすべて仕事
          に現われるんだと思ったのです。そう考えたら、よりお客様に満足頂く
          には、日々自分を磨いていくしかない。そんなふうに考えるようになっ
          て、本当に色々本を読んだり、講演会にいったり、セミナーに参加をし
          たり、様々なことに興味をもつようになりました。
 
浜本社長    先程おっしゃった「お客様が喜んで下さることで、自分がそれだけ愛
          される人間になっているとか、必要とされる人間になっていることを
          自覚する
」を聞いて、少し思い出したことがあります。

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経営者略歴

オリーブの丘 代表
ひぐち まり氏 (Mari Higuchi) 

外資系銀行・建築企画会社を経て1988年より、ブライダルに携わる。
1987年にはジミー・カーター第39代アメリカ合衆国大統領を迎えたプライベートレセプションを担当した経験もあるおもてなしのスペシャリスト。
現在はウエディングプロデュース界の草分け“オリーブの丘”代表。 新郎・新婦の立ち居振る舞いレッスンや、人間力アップに重点をおいたプランナー養成講座は、ランクアップを求める人たちに人気。
他にも結婚式場・ホテルのコンサルティング、セミナー講師、パーティ文化を広めるためにパーティ開催など幅広く活躍。
日本ブライダルプロトコール協会の代表、日本プロトコール&マナーズ協会理事、エコールドプロトコールモナコ アドヴァイザーも務めている。

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株式会社ヒューマネクスト 代表取締役
浜本 亜実氏 (Ami Hamamoto) 

シャネル(株)で長年培った美容知識を活かし、化粧品、ジュエリーブランドのPRにも携る。
その後、六本木ヒルズ(複合施設)の立ち上げに参画し、ヒルズ内で働くスタッフ数千名の研修にはじまる街全体のCS事業や会員制クラブの運営事業を担当する。

2005年独立。株式会社HUMANEXT設立。教育コンサルティング・サービスプロデュース事業を展開。

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