
『スペシャリストに学ぶ、”おもてなし”の本質』 (後編)
7回目となる経営者対談。今回は、ウエディングプロデュース界の草分け的存在であり、おもてなしのスペシャリスト、オリーブの丘 代表 ひぐちまりさんと、企業価値を高めるサービスブランディングを手掛ける、株式会社ヒューマネクスト 代表取締役 浜本亜実さんをお迎えし、「おもてなし」をテーマに語っていただきました。
みなさんは、“おもてなし”についてどのようなお考えをお持ちですか?“おもてなし”に正解はありませんが、今回の対談を通じて数々のキーワードが飛び出しました。そのキーワードを意識することで、自己流の“おもてなし”により深みが増すのではないでしょうか?
の出身で、高校卒業してリクルートに入社したのですが、会社から内
定が出た冬、わざわざ採用担当の方が学校まで挨拶に来られたんで
す。その後、私の実家にも挨拶にと急に言われまして。当時は携帯
電話もメールもありませんから、連絡しようもない。母は日中畑に出て
農作業をしていますから、自宅に電話しても連絡がつかないんです。
結局何の連絡もせぬまま、担当の方をお連れするしかありませんで
した。
精一杯のおもてなしは、なんとインスタントラーメン、忘れもしないチャ
ルメラでした(笑)、それからご飯とたくあん。「そりゃあ、ないだろう」
って心の奥で叫びましたよ!顔から火が出るくらい恥ずかしかった
ことを今でも覚えています。
てですよ、「うああ、美味しそうですね。お腹空いてたんですよ!」と
おっしゃって、パクパクと美味しそうに勢いよく食べ始め、全部平らげ
て「すごく美味しかったです、ご馳走様でした」と。
なしは最高だな。すごく感動したよ」っておっしゃるんですよ。

浜本社長 おもてなしはやはり想いに宿るのですね。
をずっと、もう30年も前の話なのに憶えて下さっていて、先日お会い
した際も「普段通りのものを出すって、最高のおもてなしだよ」っておっ
しゃって下さいました。
あります。銀行に勤めていたときに知り合った友人の話です。その
友人は非常に裕福で、愛用車は外車、普段から高級レストランで食事
をするような人でした。ある時、その友人の遊び仲間の方が私たちを
ご自宅に誘って下さったことがありました。
と、ギャー、ギャー泣いていて、部屋も少々散らかっているような状態
でした。まあ、子どもが小さいと部屋を整然と保つことは難しいです
から。
お食事がですね、言葉は悪いのですが、子ども用のメニューみたい
なものだったんです。ミニハンバーグとかタコ風のウィンナーとか。
正直言って、私はちょっと驚いたんです。人を招待した際に振る舞う
メニューなのかなあと。
嬉しいなあ。凄く美味しそう!」と言ってすぐに食事に手を付け始めま
した。私は、その行動にまた驚いてしまいました。
大変なこと。場合によっては、いつもより念入りに掃除をしたり、食材も
多めに用意しておかなければならないでしょう?手のかかる小さい子
がいて大変な時期にもかかわらず、わざわざ私たちを招待して下さっ
て、奥様なりの今できる精一杯おもてなしをしてくれている。そのことを
ちゃんと知っているからこそ、どんなことも喜んでいる友人。おもてなし
を素直に感じる、おもてなしを受ける側の気持ちや振る舞いも大事な
んだということをその時に学びましたね。だから、見た目だけにとらわ
れていた自分が非常に恥ずかしくなりました。
気持も大事だということにもなりますよね。

する方もされる方も相手の気持ちを理解しているから成り立つもの。
一方通行だと、おもてなしと理解されないかもしれない。「もしかして、
私のことを気遣ってくれているのかな?」と気がつくことで、はじめて
“おもてなし”が成立するのだと思っています。受ける側の感性もとっ
ても大切ですね。
それによってお互いに心地良い時間を過ごせるようになるというか。
乗って『開』ボタンを押し、降りる時も最後に降りるようにしているんで
す。それは、いつどこでお客様にお会いするか分かりませんので。
に少し意識が変わりました。というのは、相手の好意を受ける事も
大切なマナーであることを知ったからなんです。
ながら、一人ひとりが降りていかれるのを見送っていました、エレベー
ターガールでもないのに(笑)。無言で去る人もいれば、私の行動に
気がついて軽く会釈する人、「すみません」「ありがとうございます」と
言ってくださる方もいました。
最後に降りようとした男性が私の背後に来られて、私の代わりに
『開』ボタンを押し、「お先にどうぞ」と言って下さったんですね。マナー
講座を受ける前の私だったら、「いえいえ、私は最後までボタンを押し
ていますので・・・」ととにかく最後に降りようとしたと思いますが、相手
の好意を受けることの大切さを学んだ私は「ありがとうございます」と
言って先に降りました。
ことはないけれど、「この人は知っているんだ」とお互いを認識した
途端、とても心地よい空気が流れ、お互いにどことなく幸せな気分を
味わえる。だから、相手の好意に気づくとか知っているというのはすご
く大事なんですよね。
なるってことですね。
やすい雰囲気の方と挨拶しにくい雰囲気の方がいらっしゃる。行動す
る側の心構えと同時に、受ける側の在り方も大切なのですね。自分
自身もできているかと改めて見つめたいです。
レストランでサービスマンを褒めれば、彼らだって嬉しいですよね。
そうしたら、期待するわけではないけど、結果的に自分が過ごしやす
い時間になるはずですから。
そこで興味深い結果が導き出されたんですよ。
なるか」という質問をしたんです。そうしたら、「いらっしゃいませ」という
声掛けに対して、「こんにちは」とか「今日はよろしくお願いします」とか
言う方がいるのですが、そういう方にスタッフ全員がサービスしたがる
という結果が出来ました。
それから、食事を終えて帰り際に「ごちそうさまでした、ありがとうござ
いました」と言う方へも、再度来店された際にも顔をきちんと覚えてい
て、サービスをしたくなるというのです。
コミュニケーションをとるようにしているんです。例えば、「●●さんの
ご紹介でお電話しました」とか「大切なお客様をお連れするので・・・」
とか。
ちょっとしたコミュニケーションをすることで相手との距離を縮めること
ができます。そうすることで自分が居心地のよい環境を作ってしまう。
つまり、場を味方につけてしまおうということなんです。そうすれば、
自分がリラックスしますし、一緒に食事する方もリラックスできて、
一緒に楽しい時間が過ごせるでしょう?
たちが一番リラックスできる場所だからこそ、来て下さった方々に最高
のおもてなしが出来る。来て下さる皆を笑顔にできる自信を持てるとい
うか。そこに関われるウエディングの仕事というのは、最高の仕事だと
私は心から思います。
強く感じています。
ら、半分は私の主人のおかげで、半分はこの仕事のおかげだと心底
思っているんです。
は、自分は絶対結婚なんて出来ないだろうと思っていたからなんで
す。すごく人見知りで、しかも人付き合いが下手で。だから、自分ひと
りで食べていくには外資系企業で働くしかないと真剣に考えていた
くらいです。
両親は姉にかかりっきりだったんですね。大変そうな親をみて、子ども
心に私は親に迷惑はかけないようにという意識をしていました。
今から思うと人との関係の構築の仕方を分からずに成長してきたの
かもしれません。その代わり、自立心だけは旺盛で、しっかりモノで
通ってはいたと思います。人として信頼はされるけど、可愛げがある
子どもではなく、一緒にいて楽しいというタイプでもありませんでした。
お話しますね。銀行に一般職で入社したものの資金部に転部となり、
世界が一変したんです。部の私以外のスタッフは全員英語が堪能でし
たから、とにかく仕事をするためには英語力が必須。なんとか独学で
と毎日勉強していたら、香港オフィスにいる先輩で、エルシーという
女性社員が仕事上で色々とサポートをしてくれたんですね。「マリは、
英会話スクールを行かせたら、もっと仕事ができるから」と上司に口添
えまでしてくれて。そのおかげで、語学学校に通わせてもらい、少し
ずつ仕事もスムーズに回るようになっていきました。
いいから」と誘ってくれました。彼女はわざわざ3日間も会社を休み、
香港の色々な場所を案内してくれたんですね。 ある日海沿いをドライ
ブしながら、エルシーが「ねえ、見てみて!すごい夕日でしょう?」って
いうのです。
確かに夕日は綺麗でしたが、それに対して私は「ふーん」と返答。
そうしたらね、仕事上でもこれまで一度も怒ったことのないエルシーが
車のダッシュボードをたたきながら、「あなた本当に大丈夫なの?
私は会社を休んであなたに付き合って、この景色を見せたくて車を
走らせてきたのに!それなのに『ふ~ん』っていう態度はないんじゃ
ないの?」と声を荒げたのです。自分自身の行動にハッと気づいた瞬
間でした。その瞬間、自分が人の心を感じる機能を完全にオフにして
いることに気付きました。
ら結婚してもうまくいかないと勝手に思い込み、いつ別れることになっ
ても大丈夫なようにと結婚式を挙げても7年間、入籍しなかったり。
そもそも結婚式も挙げるつもりはなかったくらいでしたし。
まったく想像できないようなタイプだったわけですね。
ホスピタリティとは何ぞやという話をさせていただいていることも本当
におかしな話です(笑)。

浜本社長 だからこそ、まりさんのお話には説得力があります。本日も学びが多く
て、ノートが文章でびっしりと埋まっています。
る子だったら、こうやっていろんな方の前でお話することなんてなかっ
たんだろうと。
これまでの人生でも、失敗ばかり。でもどうにか脱出したくて本を読ん
だりして、それでもうまくいかないこともあり、とにかく私にとって人間
関係はうまくいかないことだらけだったわけですよ。その中でどうやっ
たら、自分が人の役に立てるようになるかと愚直に向き合ってきたか
らこそ、今の仕事ができていると思っています。結婚式の仕事に私は
少しずつ育ててもらったと思っていますから、その過程で感じたこと、
学んだことなど、私が伝えられることは人に伝えていきたいと思うよう
になりました。
のも抵抗があったんですね。カーター元大統領を招いたレセプションに
ついても、その時にたまたま社長秘書だったから関わらざるを得なか
っただけだと思っていましたし、人との関係もきちんと構築できなかっ
た人間だったわけですから、人様の前でどんな顔をして「おもてなしと
は?」と話せばいいのかと葛藤がありました。
砕いて話せるのは、自分がとても苦手だったからこそ、一生懸命学び、
覚えてきた成果なのだと。その時に、初めて「人前で話してみよう」と
思えるようになりました。
分からないとか、物の見方が変われば生きやすくなるだろうなと思わ
れる人もいますよね。そんな人たちに「実は私もそうだったのよ」なん
て話ができると、自分で苦労したかいもあるのかなと思ったりしてい
ます。
ジメントが全く下手でしたから。それが今、その時の裏がしとでも言う
のでしょうか、今はお客様にマネジメントを提案する立場になってい
ますから。
親近感や共感が生まれ、そこから深い思いが伝わるのだと改めて思
います。
ているんですね。でも私はよく言うんです。「良かったね。それを自分
できちんと覚えたら、次の人に教えられるね。それが貴方の財産に
なるね」と。最初から何でもかんでも出来る人はそういませんし、天才
だったとすれば人には教えられないと思うんですね。苦労した経験が
あるからこそ、その苦労から脱出したノウハウを人に伝えることができ
るんです。
をする自分を認めることができずに、常に完ぺきを目指し、走り続けて
きました。でも自分自身を認めることができないと自己重要感を感じる
ことができないことばかりか、周囲にまで完璧を求めるようになってし
まうこともあります。そんなあり方が周囲を傷つけてしまうこともあり
ます。
だからこそ、今は、自分も周囲もありのままの姿を理解し認めながら、
その上で目指すところに向かう努力を愚直に続けていきたいと思って
おります。
までお聞きすることができ、非常に面白い対談となりました。お二人
からお聞きした大事なキーワードを意識して、仕事に生活に向きたい
ものです。今日は本当にありがとうございました。
経営者略歴
オリーブの丘 代表
ひぐち まり氏 (Mari Higuchi)
外資系銀行・建築企画会社を経て1988年より、ブライダルに携わる。
1987年にはジミー・カーター第39代アメリカ合衆国大統領を迎えたプライベートレセプションを担当した経験もあるおもてなしのスペシャリスト。
現在はウエディングプロデュース界の草分け“オリーブの丘”代表。 新郎・新婦の立ち居振る舞いレッスンや、人間力アップに重点をおいたプランナー養成講座は、ランクアップを求める人たちに人気。
他にも結婚式場・ホテルのコンサルティング、セミナー講師、パーティ文化を広めるためにパーティ開催など幅広く活躍。
日本ブライダルプロトコール協会の代表、日本プロトコール&マナーズ協会理事、エコールドプロトコールモナコ アドヴァイザーも務めている。
株式会社ヒューマネクスト 代表取締役
浜本 亜実氏 (Ami Hamamoto)
シャネル(株)で長年培った美容知識を活かし、化粧品、ジュエリーブランドのPRにも携る。
その後、六本木ヒルズ(複合施設)の立ち上げに参画し、ヒルズ内で働くスタッフ数千名の研修にはじまる街全体のCS事業や会員制クラブの運営事業を担当する。
2005年独立。株式会社HUMANEXT設立。教育コンサルティング・サービスプロデュース事業を展開。
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