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2009.10.29 UPInterview Vol.113
100年後、1000年後も必要とされる仕事をしたい (後編)
植木屋事業を展開する、株式会社oh庭ya(おにわや)の増島靖史社長のインタビューをお届けします。
サービス業としては当たり前の明朗会計やお客様の視点に立った徹底したサービスの提案することで、これまでの業界イメージを大きく変えて行こうと日々チャレンジされています。
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さて、いよいよ増島社長の過去をお聞きしたいと思います。20歳くらいから様々な事業を経営されてこられたと先ほどのお話にもありましたが。

父親はサラリーマンで母は専業主婦という、俗にいう昭和の典型的なサラリーマン家庭に育ちました。父親の転勤で日本各地を転々とした生活を送りました。実は、それがすごく嫌で。仕事の都合だからといって、なぜ知りもしない環境で生活しなければならないのかと疑問で、ある時母親に尋ねたんです。「どうしたら引越しをしないで済むのか」と。そうしたら、「自分で何か事業をやればいいのよ」という答えだったので、「じゃあ、大人になったらそうするよ」と。それが小学生のときの話です。そこからですね、将来は絶対自分で事業を興すんだと心に決めたのは。中学、高校に進学してもその思いは変わりませんでした。

それはすごいですね。でも、お父様は起業には反対されなかったんですか?
父親は猛反対でしたよ、だから「大学へは何があっても進学しなさい」と。しかも「大学卒業後は口を利いてあげるから、とにかく一般企業に就職しなさい」という感じでしたし。でも、私の中では企業に就職するという選択肢は全くなく、起業することしか頭になかったですね。
高校を卒業したわけですが、起業といっても何をすればよいのかさっぱりわからない。自分の好きなものを扱えば何とかなるのかな程度の感覚で、それであれば趣味の域を超えるくらい好きな車・バイク関係の仕事にしようと考え、手始めに自動車販売会社で一年間働かせてもらいました。
そして独立、中古車販売業をスタートさせました。毎日大好きなものに接していられるからか、異常なくらい儲かってしまったんです(笑)。独立する際に、20代前半で父親の年収を追い越してやろうなんて目標を掲げたんですが、あっという間に父親を超えてしまいました(笑)。
根っからの車好きでしたからね、お客様の痒いところに手が届くようなことができたんだと思います。そんな状況でしたから、「商売って意外と簡単なんだな」という勘違いが始まったわけです。一方で、将来に対する漠然とした不安もありました。
事業が非常にうまくいっていたにも関わらず、ですか?
お金は充分過ぎるくらい手にしていましたが、極端に言うと100円で仕入れたものを200円で売るような商売の繰り返しの日々に飽きを感じるようになってしまったんですね。それなりに値打ちのある自動車を販売して、傍から見たら恰好よく映る仕事だったかもしれません。しかし、商品を右から左に流すだけの仕事に、人間としての深みを得られる要素がないんじゃないかと感じるようになってしまって。
10年後も自分は車を売っているのか、これが本当にやりたいことなのかと悶々とする日が続き、「やっぱりやめよう」と決意しました。それは、世の中に絶対に必要なことを仕事にすることこそが、自分の大きなやりがいにつながると考えるようになったからです。そして、農業の世界へ足を踏み入れることに決めました。
農業ですか。それはまた随分急な発想の転換でしたね。
人間が生きていく上で必要不可欠なものとは何か、それは食べ物だ。食べ物=農業ビジネスだ!とピーンときたんです。25歳のときでした。
自分で農作業をしましたし、農家の繁忙期に対応できる人材派遣業なども手掛けました。しかし、結果的には失敗に終わりましたね。農業に関する認識の甘さがあったことや特異性の中で新参者がビジネスを展開していくことの厳しさを嫌という程味わいました。でもそのおかげで、造園という業界にも出会うことができたんです。
いよいよドラマっぽくなってきましたね。
農作業の人材派遣事業を手掛けている時に、派遣先拡大のために新聞の折込みチラシに広告を出してみたんです、「農作業請け負います、草刈り一坪100円で行います」と。たった2行の謳い文句で。
農作業に関する問い合わせや依頼は一件もこなかったものの、草刈りの依頼はあったんです。早速草刈り機を背負ってお客様のもとへ飛んでいきました、そして「どうしてうちを選んでくれたんですか?」「今までシルバー人材センターの方に頼んでいたんだけどね・・・」といった世間話から、もしかしたらこの世界で自分の考えてきたことが実現できるかもしれないと思い始めました。
考えてきたことというのは、存在感のある仕事ということですか?
そうです、そうです。造園業界について自分なりに徹底的に調査をすると、大手企業の存在もなく、業界構造としても新規参入も可能。知れば知るほど、追い求めてきた仕事、つまり世の中から必ず必要とされ、なくならない仕事=存在感のある仕事であると確信していきました。
さらに実情を調べるために、電話帳に載っている造園会社に片っ端から電話をしてみました。「100坪の草刈りをお願いしたいのですが、幾らでやっていただけますか」という問いに即答してくれた会社が一件もなかったんですよ。
個人経営がほとんどで、奥様らしき方が電話に出られて「お父さんが帰ってこんと分からんね」「夜8時頃にはお父さんが帰ってくるから、その頃にまた電話してくれる?」というケースが当たり前。
次に『株式会社』と名のつくところに電話をすると、今度は男性が出て「見てみないと分からんけど、大体10万円かな」とか適当なことを言うわけですよ。
こんな対応に本当に依頼をしようとしているお客さんだったらどう感じるか。あの時に受けた衝撃はいまだに忘れられなくて。農業というテーマで仕事をしていて、造園業という脇道に逸れたんですが、その脇道が王道だったということです。もうやるしかない、すべての始まりでした。

造園業はサービス業から程遠すぎる、なんとか近代化するんだと。
そうはいっても、自分の目で業界の本質を探る必要がある、そのために最低でも3年間は一作業員として現場で徹底的に働こうと決めていました。農業ビジネスでの失敗もありますから、本質を見極めてからでないと事業として本腰は入れられない。
とにかく植木業界、造園業界のことをお客さんの立場から知り抜くことが重要となると思い、見積もりから実際の剪定作業まで全部自分で行いました。決して避けて通ってはならない道なんだとも言い聞かせていました。
『石の上にも3年』ですね。
3年間現場を経験したら、絶対に本質を掴むことができると確信していました。お客様との会話の中から、喜ばれることを学び、さらなるニーズを掴むこともできる。サービス業という精神に欠けていた業界でしたから、それこそ色んなことが見えてきました。あれもしたい、これもしたいとアイデアが湧いてきて、興奮しっぱなしという感じでしたね。
“3年”にこだわった理由はもうひとつあって、リピーターの動向を知りたかったということがあります。中古車販売業をしていた際に商品を売り続ける大変さを経験していますから、今売れていても来年売れるという保証はどこにもないことを知っていました。
事業として成長させるには、毎年新規顧客を開拓するのは厳しく、既存顧客プラス新規顧客を上乗せしていかなければ難しい。3年というのは、造園の素人としてスタートし、翌年にお客様がまた依頼してくださるか、3年目もまた、といった具合に継続的にお付き合いいただけるのかと、事業として成立させられるかの判断基準にしたかったんですね。
自分の中でこうすればお客様は来年も依頼してくれるんじゃないかと考えるわけですが、それが揺ぎない信念に変わるまでに、やはり3年は必要でした。3年間徹底的にお客様と向き合ったことで「これはいけるぞ!」と一気に加速し、名古屋から東京に進出を決めたのです。
なるほど。ということは、高いリピート率も御社の売りですね。
私がこの事業をやり始めの頃に比べたら、数段高くなっていますが、私が目標にしている100%近いリピート率はまだ達成できていません。すべてのお客様から再度依頼されることが当たり前だと私は思っていますし、それは実現可能だと考えていますので、当然まだまだ課題は山積みです。設立から5年経ちますが、まだ20拠点しか展開できていませんしね。将来ありたい姿はしっかりイメージできているんですが、そこに到達するまでの手法は何通りもあるんじゃないかと慎重になるときもあります。
将来は上場も考えていらっしゃるんですよね、ベンチャーキャピタル(VC)も入られているようですし。
この仕事の本質を追求していくなかで必要になったときには上場しようとは考えています。しかし、上場することだけを目的にして仕事はしたくないというようにも思っています。ただ、上場に必要な準備だけは今からでもしておきたい。VCの方々にも私の今の考え方を正直に伝えていまして。ある程度理解していただいていることもあって、良いお付き合いをさせていただいています。
私は会社を上場させるためにこの仕事をしてきたわけじゃないですし、今いる社員だって上場のためのメンバーじゃないですから。「存在感のある仕事」のために会社を立ち上げ、社員もそこに魅力と意義を感じて働いている。上場云々ではなく、一企業として利益を上げることができ、会社の仕組みが整っていた方が良いに決まっています。
企業としてありたい姿を明確にして、状況を見て上場すべきタイミングが来れば上場すればいいと捉えています。VCの方にはあまり大きな声では言えませんが(笑)。
増島社長のそのストレートなところに、皆が応援したくなる要素が隠されている気がします。さて、それでは今後についてお伺いしたいと思います。やはり農業への参入は意識されているんですか?
それはずっと意識はしてきていますよ。企業理念に「フィールドイノベーション~人と自然の有機的な共生の実現~」と掲げているんですが、農業に限定するわけではなく、フィールドワークをテーマにしていきたいんです。存在感のある仕事=人間の手がかかるもの=フィールドワーク(一次産業)、そして一次産業にイノベーションを起こすことにすべてのエネルギーを注いでいきたいですね。
ITイノベーションでは、便利さの追求によって人間の生活がより楽になりました。でも、どこまでも追求したら、人間が何もしないだけになってしまうんじゃないでしょうか。ITイノベーションは悪いことではないけれど、人間は食べなければ生きていけない。10年経っても、20年経ってもご飯を食べて生き続ける。生きるために必要不可欠なことを仕事にする、それこそが存在意義ってもんだと思うのですね。
農業ビジネスの中で私たちが貢献できることがきっとあるはずです。例えば、人材不足が問題となっていますが、剪定作業の機械化は難しく、必ず人間の手が必要となります。労働力の確保が必要だけれど、そのために正社員を雇用することは難しい。となると、労働力を流用化させるしかない。そうなると、我々のような業態であれば、例えば剪定だけ請け負うこともできる。
農業ビジネスの経験で学んだのが、作物の最も良い時期に集中的に出荷できたら一番利益が上げられるということ。例えば大根を今出荷すれば150円で販売できるという時期に、3日後の出荷では80円になってしまう。でも、最も高く販売できる時期に合わせて人材を確保するのが非常に難しい。
もし将来的に我々が参入するとすれば、流通や販売ではなく、そういった必要な時に必要な人材を確保するサービスに特化することになるかもしれません。全国津々浦々にある我々の支店から、スタッフを送り込むことで解決策となればとも考えています。
そして農業だけではなく、極端なことを言えば林業でも同様のことが可能になるかもしれません。絶対に機械化できない、でも人材の流用化が不可欠な業界、そういったところに貢献していけたら本望ですね。


そうなると、拠点と人材を増やし、さらには人の育成にかなり力が入っていきそうですね。今現在も名古屋と東京を頻繁に行き来され、かなりハードスケジュールな日々を送られているようですから、益々体力維持と健康管理が重要になってきますね。
本当ですよ。そう思って、1年半ほど前からジョギングを日課にしています。その甲斐あって、体重もだいぶ落ちて、今結構調子もいいんですよ。
今後は“自分に厳しく”というテーマをさらに強化していきたいと思っています。それはなぜかというと、課題を超えていける人間でありたいという思いがありまして。やると決めたことを必ずやり通せる人間でありたい。人間って絶対自分に甘くなってしまうものじゃないですか。でも、そこをグッと我慢し、目標を掲げた以上、継続し達成できる自分になっていきたい。
今年40歳を迎えるんですが、この40歳というのは人生の大きな節目で、これから本当の勝負が始まるときだと思っています。30代はその予行練習。これまでは規模拡大や利益だけではなく、お客様のこと、社員のことに気を配りながら前に進んできました。40歳から10年間計画で一期に勝負をしかけていこうという気持ちでいます。
一気にアクセルを踏んでいく感じですね。いやはや、これからのご活躍が益々楽しみになってきました。
ところで、ある記事で 趣味は“クワガタ採り“と書かれたものを目にしました。ちょっと意外な感じがしたのですが。
クワガタ採りはですね、自分の原点と言えるものかもしれません。物事を感覚で捕らえていくことを学んだとでもいうのでしょうか。
クワガタは、本などを読めばどこに潜んでいるかが分かるものではなくて、クワガタのいる場所特有の匂いっていうのがあるんです。この匂いのする場所には必ずいる。自然の中で人間の感性が研ぎ澄まされるからこそ察知できるんでしょうかね。「なんとなく匂いがするから、あの場所に行ったらクワガタがいるんじゃないか」と思って行くと、「やっぱりいた!」という経験を何度もしました。このドキドキ、ワクワク感が忘れられなくて、今も続けているというのと、幼い頃のような純粋な気持ちが蘇ってくるんですよね。
クワガタ採集によって増島社長の感性は磨かれたということですね。
こじつけかもしれませんが、やはり仕事も同じことだと思うのです。感性で仕事をするというか、「これはいけるんじゃないか」とか「これは違うな」という勘が働くというのでしょうか。この事業に出会ったときも、自分のなかで何かがピーンと来たものがありましたら、今後も何事にも恐れることなく、目標に向かって大いにチャレンジし続けていきたいと思っています。

ビジネス成功の原点はクワガタ採りにありそうですね。本日は本当に楽しいお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
経営者略歴
株式会社oh庭ya 代表取締役社長兼CEO
増島靖史氏 (Yasushi Masujima)
1969年11月 静岡県生まれ
2000月4月 oh庭ya創業
2004月3月 株式会社oh庭ya設立
Company Data
| 社名 | 株式会社oh庭ya |
|---|---|
| 所在地 | 【東京本社】 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-21-6 TEL:03-5456-0028 FAX:03-5458-1028 【名古屋本社】 〒463-0025 愛知県名古屋市守山区元郷1丁目205 |
| 代表者 | 代表取締役社長 兼 CEO 増島靖史 |
| 設立 | 2004年3月16日 (2000年4月創業) |
| 業務内容 | 庭のメンテナンス・管理・各作業 鉢花アレンジ、花壇等ガーデニングプロデュース 装飾(枕木アート・クリスマスイルミネーションetc) 庭木の販売 庭の施工・リフォーム |
| URL | http://www.oh28ya.com |
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