語る 経営者インタビュー

2010.04.26 UPInterview Vol.114

NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク 理事長 松井秀文氏

“子供たちの無限の可能性を救いたい” (後編)

今回は、小児がんへの正しい理解の促進と、小児がん患者の子どもたちへの支援に取り組む、NPO法人ゴールドリボン・ネットワークの松井秀文理事長のお話をお届けします。小児がんは、年間で2500人位が新たに罹患し、全国で1万6000人近くの子どもたちが、闘病生活を送っているといいます。この小児がんに対して、「治療研究開発支援」「QOL向上支援」「理解促進」の3つの柱で活動を続けているのが、NPO法人ゴールドリボン・ネットワークです。保険会社アフラックの社長、会長を務めた松井秀文理事長に、その取り組みについてお聞きしました。

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ところで理事長、小児がんの治癒率は改善されてきているのでしょうか?
 
小児がんの治癒率はアフラックががん保険を始めた昭和40年代には1桁くらいだったと思います。厳しいものでした。しかし、現在は“転移がなければ”という条件付ながら、70%くらいは治るようになりました。アメリカの小児がんの治癒率は90%くらいと言われており、日本の治療率がさらに上がることを願っています。ただ再発したがんの治癒率はまだ20%以下だといわれており、この点の改善が必要です。
 
劇的に改善されているわけですね。少し明るい気持ちになりました。しかし、日米の治癒率の差を寂しく感じました。日米の小児がんの治癒率の差はどこから来るのでしょうか。
 
欧米の場合は、子どものがんのための薬の開発について、基本的に国がかなり支援しているんですね。特に米国では、大人の抗がん剤を作るときに子どもの抗がん剤の開発も義務付けている部分もあると聞いています。米国は、人口も多いし、一方のヨーロッパはEUという枠で捉えられるので、日本より母数が大きいことは優位でしょう。小児がんに対して、やはり制度や国の考え方の差も大きいのではないでしょうか。アジアに目を転じて見ますと、例えば韓国では、欧米で認可された抗がん剤の使用を認めていると聞いています。日本は、日本人に対する治験を行い、承認されなければ使えません。そのあたりのルールについては国の方でも再考の余地が大きくあるのではないかと感じています。
日本における小児がんの抗がん剤の開発の遅れの最も大きな理由は、患児の発生数が少ないことにありまして、大人の抗がん剤が70種類以上あるのに対して、小児がんに使えるのは、わずか10類程度しかありません。最近少し増えてきているというものの、まだまだ薬は足りないのが現状です。
 
■ゴールドリボン・ネットワークの活動■
 
小児がんの現状をお話いただく中で、ゴールドリボン・ネットワークが目指すものについてもいくつか触れていただいていますが、その役割についてまとめた形でお話いただけるとありがたいのですが。
 
私たちの活動方針には3つの柱があります。第1に、「よりよい治療方法と薬の開発への助成・医療体制の構築支援」。2つ目は、「小児がん経験者のQOL向上のための研究開発への助成・支援」。3番目は、「小児がんとその患児への理解を促進するイベント、シンポジウム開催による広報」という3つの取り組みです。
まず、治療方法については、「脳腫瘍」「血液がん(白血病)」「肉腫(固形腫瘍)」の3つグループに分け、研究助成をしています。また、「財団法人 がんの子供を守る会」の研究助成の中に当NPO法人の助成枠をつくっていただいて、守る会の方と協働して実施しています。「QOLの向上」については、守る会の中心的活動のひとつですが、将来的には我々は自立支援の中で子どもたちが社会に出ていくためのトレーニングの場として、一緒にそういう人たちが集まって働ける場をつくることができればと思っています。
「理解促進」という点では、まだまだ、小児がんについてもゴールドリボン活動についてもPRが不足しており、これからどんどん広げていき、ファンドを含め、支援する体制をつくっていきたいと思います。そのためにも、多くの方々、企業、団体の皆様からの支援をいただきたいと思っています。昨年3000人も参加してくださって好評だったゴールドリボンウォーキングなど、多くの方に小児がんを知っていただくイベントの開催や、財団法人先端医療振興財団と提携して、がんの情報サイト(PDQ)の小児がんの部分を、一般の方でも読みやすいように用語解説を入れた冊子を作り配布する予定です。

144-4.jpg(今後の事業展開を熱く語る松井理事長)

今、「財団法人 がんの子供を守る会」のお話が出ましたが、そうした他の団体との連携や役割分担も上手にやっていこうということかと思います。
さて、先日入会しましたところ、とてもきれいなゴールドリボンのバッチを送っていただいました。なぜ、小児がんのシンボルを「ゴールドリボン」にされたのですか。
 
乳がんの早期発見・早期診断・早期治療の大切さを伝える運動の象徴が「ピンクリボン」ですが、そのパーティに出席させていただいたことがあります。それが、とても華やかでにぎやかで上手にPRをされていまして、いろいろと触発されましてね。それがきっかけで、小児がんについてもこのままではいけないと反省しまして、シンボルリボンをつくって啓発運動をしようと思いついたわけなんです。それでいろいろ調べてみましたら、2月15日が国際小児がんデーとして制定されていること。そして、アメリカでは、すでに「ゴールドリボン」運動が展開されていることがわかりました。当然同じでなければおかしいので、“そのまま踏襲しよう”ということで、ゴールドリボン使用についての了解を取りつけました。アメリカではいろんな形のリボンがありましたが、それをベースに、日本で今のデザインを作ったんです。

乳がんは、患者さんに年齢の高い方が多いこともあり「治してもらってありがたい」という思いから、「ピンクリボン」運動へ寄付をされる方も多いと聞いています。しかし、小児がんの場合は、親が若く、自分たちの生活に精一杯の年齢で、「ありがたい」とは思っても、なかなか寄付には結びつきません。そのことも、「ゴールドリボン」運動をやろうと思った1つの大きな理由です。

114-5.jpg(ゴールドリボン・ネットワークのメンバーバッチ)

小児がんというものについて、そしてゴールドリボン・ネットワークの取り組みについて、だいぶ理解を深めさせていただくことができたように思います。そろそろお時間も迫ってきました。理事長、MG―NET+の読者の皆さんに、最後にぜひメッセージをお願いできますでしょうか。
 
ありがとうございます。私は、小児がんの子の命を救うということは、その子の可能性をも救うことであると思っています。これから続く人生の中で子どもたちは無限の可能性を持っているはずです。何としても失われていっている多くの可能性を救いたい。切に思っているところです。そのためにも皆さんのお力添えをいただきたいと思います。
繰り返しになって恐縮なのですが、まずもって、皆さんに小児がんについて正しく理解していただきたい。そのことが最もお願いしたいことです。そして、小児がんの子どもたちが復学する際の受け入れをスムーズにしていただきたい。彼らが合併症を持って生きていく上での社会の受け入れについても、やはりなんとかスムーズにもっていけるよう、私どもは役に立ちたいと思っています。患児が世の中に出ていける場をきちんとつくっていくようにしたいと思うのです。
さらに、かなり治る病気になったとはいえ、再発した小児がんの場合は治癒率が低いので、再発がんについても治る病気になるように研究助成できればと思っています。そして少しでも合併症がなく、障害なく治るような治療になっていくことを願っています。そういう面で、我々もできるだけの支援をしたいと考えています。
 
ありがとうございます。(事務所に飾ってある歌手の「より子」さんの写真やアルバムを手に)小児がん患者であったというより子さんの存在を今日初めて知りました。今後はその活動にも注目していきたいと思います。後ほどアルバムも聴かせていただいて、MG―NET+の「音楽」のコーナーでも取り上げさせていただこうと思います。
 
今野さん、シンガーソングライターのより子さんは、今でも薬を飲みながら頑張っているんですよ。小児がんのことを理解してもらい、小児がんの子たちの希望となってもらうためにも、彼女にはますます活躍して、いろんな場で体験を語ってもらうことが大事だろうと思っています。そういう意味でも、私どもは彼女の活動を支援していこうと思っていますし、ぜひ皆さんにも応援していただきたいと思います。
 
■経営者として大切にしている言葉■
 
松井理事長、本日は長時間に渡って色々とお聞かせいただきまして、ありがとうございました。できれば、アフラックの社長、会長時代の経営ポリシーについてなどもお伺いしたかったのですが、時間が来てしまったようです。そのあたりについては、またお伺いする機会をいただければありがたいと思いますが、当時大切にされていて皆さんにもお話されていた言葉などがありましたら、お聞かせいただいてインタビューの結びとしたいと思います。お願いできますでしょうか。
 
そうですね。大切にしている言葉は色々ありましたが、今すぐに思い浮かぶ言葉を申し上げるとすれば「不易流行」と「相利共生」という言葉でしょうか。このことは、アフラック時代でも、ゴールドリボン・ネットワークを運営していく今後においても共通して言える大切なことだと思っています。アソシエイツ(代理店)さん向けの講演会などでも話していました。
「不易流行」についてですが、「不易」とは、たとえ時が経とうとも変わらないもの。「流行」とは、時とともに移ろい行くもの。時が経っても変わらない不動の理念や信念を持ち、時とともに変わっていくものを受け入れながら発展していかなくてはならないということです。
もうひとつの「相利共生」についてです。共生の反対語は寄生です。共に努力して生き、関係者のいずれにも利のある関係や取引を行っていかなくてはならないという考え方です。
これらの二つの言葉は、ゴールドリボン・ネットワークを立ち上げてから、ますます大切だという思いを強くしている言葉たちです。
今野さん、今日は私のほうこそ貴重な時間をいただいてありがとうございました。これからもどうかよろしくお願いいたします。
 
ありがとうございます。いただいた二つの言葉は、経営者として私も肝に銘じたい言葉だと思いました。本当に今日はありがとうございました。これからもゴールドリボン・ネットワークの活動に注目していくと共に、自分としてできる限りの取り組みができればと思います。よろしくお願いいたします。
144-6.jpg
松井理事長の篆書を背景に)

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経営者略歴

NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク 理事長
松井秀文氏 (Matsui Hidefumi) 

1944年 生まれ
1968年 東京大学経済学部 卒業
1968年 川崎製鉄株式会社 入社
1974年 アメリカンファミリー生命保険会社 入社
1995年 社長就任(日本における代表者)
2005年 会長 就任 
2007年 相談役 就任

Company Data

社名 NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク
所在地 東京都新宿区下落合3-2-12イルドルカン402号室
代表者 理事長 松井 秀文
設立 2008年6月25日
業務内容 小児がん克服に向かって
・治療研究開発支援
・QOL向上支援
・理解促進
URL http://www.goldribbon.jp/

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