語る 経営者インタビュー

2009.06.11 UPInterview Vol.108

株式会社ハセガワエスティ 代表取締役社長 阿久津五代子氏

人と人との心のつながりを大切にしたい (後編)

今週は、株式会社ハセガワエスティ 代表取締役社長 阿久津五代子社長のインタビューをお届けします。同社はブライダルの総合プロデュースをはじめ、司会者やアーティストのキャスティング、音響・映像プロデュースやコンサルティングなど、広範な事業を展開されています。また、レストランやコスメティックの開発、販売のプロデュースなど事業の裾野も広げています。多岐にわたる事業であっても、すべては「人と人との心のつながり」という軸を非常に大事にされている企業です。

  • 経営者インタビュー

  • 経営者略歴

  • Company data

なかなかユニークな事業展開ですよね。「儲かることは何でもやる」ということではなく、あくまでも「ブライダル」というひとつの事業に真剣に取り組んでいるうちにアイディアが飛び出し、他の事業に派生していっているということですね。
 
やはり人に喜んでいただくことが一番嬉しいです、そのための事業だと私は感じています。すべてのスタッフに「HEART to HEART」の仕事をしてもらいたい、心を伝えること、それが実現できる環境をつくるといった単純なところからすべてが組み立てられているだけなのです。
 
ブライダルは本当に奥の深いものだなと私自身が感じています。結婚って不思議なものですね、全くの他人が何かの縁でひとつの家庭を作り上げていく。その門出を祝うために、式にはそれぞれのご両親や御親戚の方々、それから友人の方など一同に集まるのですが、そうすると自分たちがいかに多くの方々から支えられてきたかということを実感するんです。その実感している気持ち、感謝の気持ちなどを、言葉できちんと伝える役目を果たすのが司会という仕事であり、それを支える場を作るのが音響や映像であり、パフォーマンスであるということなんです。
 
今は結婚式を挙げない人も増えていますが、私は結婚式の良さを沢山の人に伝え、それを経験してもらう機会を提供することも私達の使命だと思っています。また、これからは結婚式だけではなく、銀婚式や金婚式、何かの節目でパーティを開くことが、当たり前の世の中になるといいですね。そこにも、司会者、音楽、記録としての映像、という仕事が思いを伝える重要な役割を果たせるようになっていたいと思います。
 
阿久津社長の夢はまだまだ無限に広がっていきそうですね。
 
img108_10.JPG
そうですね、今後まだまだ実現できることがありますよ。ただ欲張ることなく、経費配分を適切に行って黒字経営を維持しながら、着実に一歩一歩前進していきます。
 
経費配分、ですか。
 
これも至ってシンプルな発想です。毎月の売上げはある程度決まっているわけですから、家賃はいくら、人件費はいくら、何に費用を使うかといった経費配分さえ間違わずにいれば問題ない。売上げを上げられるかどうかは、業界の成長スピードと社内の人材に影響されますから、闇雲に売上げ目標を設定しても何の意味もないんです、私たちの場合は。あくまでも一番大事なのは、経費配分を間違えないってことなんだと思っています。
 
「経費配分」という考え方は、非常に実践的でユニークな切り口のことばですね。
さらに経営において、日々実践していることがあれば教えてください。
 
現在正社員は40名いますが、毎日報告書をメールで提出してもらうようにしています。今日一日どんな業務を行ったか、明日はどんな業務を行うのか、今日感じたことをその日を終わりに私宛にメールを出してもらいます。その社員の一人一人も契約のスタッフを4~5名から10名ほどの部下を抱えていますので、日々悩み、壁に当たり、流れに足をとられたりして、模索していますので、経営を引き受ける私も、共に悩み励まし合っています。
 
そして、私はそのメールを翌朝確認することが日課になっています。全員分を確認して、返信すべき内容のときは「この部分の提案は?考察は?」とか解決策を提案して返信しますし、「今日も頑張ろう!」の一言だけ、返信する場合もあります。
 
また、状態が個々違いますので、人によっては毎回きちんと返信する必要のある人もいれば、そうでない人もいます。もしくは、メールではなく、直接会話をする方が良い人もいますので、その人、その時々で対応を変えるようにしています。
 
かなりスタッフの方に対して手をかけていらっしゃいますね。
 
この手段が有効なのも、私自身も現場に立っているからということと、組織の規模がそれほど大きくないからだと思います。私自身も1ヶ月に1~2回は会場で司会をしていますし、新規のお客様から問い合わせがきたら、私は部下に同行しますし、ある程度案件が軌道に乗るまでは共に苦労します。現場が分かっているからこそ、それぞれの社員からのメールにも対応できるんだと思います。この方法は、弊社と私には合ってはいるとは思いますが、現場にほとんど出ない経営者さんの場合は返って信頼を失って逆効果になるかもしれません(笑)。
 
img108_07.JPG
毎日社員の方とそこまでコミュニケーションを図られていると、社員がどのレベルであり、どんなことで悩み、どんな指導をすれば成長できるかということが把握できているともいえますね。それはある意味すごいことですよ。
 
ある程度は把握しているとは思いますが、そうは言っても、本心をすべて私にさらけ出せないこともありますよね?メールの内容と本当に現場が思っていることにズレがあるかもしれませんので、現場のリーダーともきちんと話ようにしています。何か大きな決断をする際も、リーダーの意見を聞いてから自分の意見を言う様にしています。そして、具体的な話はリーダーから現場に伝えてもらうようにもしています。やはり、私と現場リーダーの考えが違うのも問題ですから、摺り合わせは常にしています。
 
それから、半年に1回のマンツーマン面談も行っています。メールは非常に便利なツールですが、それに頼りすぎると偏ってしまいます。3ヶ月に一度は目標設定をしてもらっています。課題を明記し、どんな方法で課題を解決していくのかという方法を書き、期限も明記します。それに対して、個人考査をし、3ヶ月に1回は所属のリーダーと面談をしています。
 
ということは、年4回提出ってことになりますね。徹底されていますね。
 
そうすることで、自分の仕事に対して自覚を持てますから。この結果によって、給与のアップ、ダウンにも影響がでますからね。自分がきちんと仕事をし成果が出たから給与が上がった、努力を怠ったから給与が下がったんだということをきちんと分からないのでは困りますよね。適正に判断しないと不信感を買うことになりますから、かなり神経を使うところでもあります。今の人数だから可能なことであって、これが200名全員が正社員だったら、、現実的には難しいでしょうね(笑)。
 
そこまでされるという理由は、やはり育成が重要だと考えておられるからですよね。
 
そのとおりです。やっぱり私も本気にならないと、人はなかなか育たない。特に現場のスタッフはまだ若く、社員の6割が20代、次に30代という環境です。ですから、成長のきっかけを与えるのは私の役目だと強く思っています。そして、各自の目標を大切にすることに加え、全社目標も大事にしているんです。
 
今年の目標は、「受け身からの脱却」を掲げています。それは相手の立場をいかに理解できるようになるかにつながることだと考えています。それは仕事においてだけではなく、家庭においても、交友関係においても、「自分がその人の立場だったら・・・」と自発的に考えられる人になってほしいからです。そうすると、相手に興味が湧いてくる、そして質問も生まれる。そして質問から、相手のバックグラウンドを知ることができる。そこで初めて、その人のためになること、心から喜んでくれることを考え、提案することができようになるんじゃないかと思うのです。
 
ですから、通常のコミュニケーションにおいても、「これはどうするのですか」ではなく、相手の立場や置かれている環境を考え、「私はこれをこうしたら良いと思うのですが・・・、いかがですか?」の姿勢に変わるように、一貫して教育してことが大事だと考えています。
 
ハセガワエスティならでは、という取り組みは何かありますか?
 
そうですね、音響事業部では年に2回「音響選曲コンテスト」を開催しています。こんなシーンにはこの曲が合うと思うものを選曲して、社員全員が審査員になって点数をつけ、得点の高い人がメダルを獲得する(笑)。
 
試行錯誤を繰り返しながら、取り組んでいます。式を挙げるお客様にとって最高に素敵な時間となるように最大限のチームワークを発揮しなければなりませんから、そのためにスタッフ同士が“互いを知る”という場を作りたいと思っています。
 
img108_11.JPG
先ほどからお話を伺っていますと、御社の最大の経営課題=人材育成ということなんでしょうね。
 
全くその通りです。常に人材募集をして、常に育てる。事業を拡大していくためには、とにかく人を育てないと。倒産してしまいましたが、某外国語教育スクール運営会社などは人が育っていないにも関わらず、店舗拡大を続けてしまったからうまくいかなかったんじゃないかと。
 
ブライダル業界は、女性が多いですから、結婚や出産のためにやむを得ず退職する場合もあります。そうなると、継続的に人材を採用して、育成していかなければならない状況にあります。
 
また、私もいずれは現役を退かなくてはならない時がきます。そのときは、このハセガワエスティを次の代に譲らなくてはいけません。次世代を担う人材は、30代、20代に一人ずつ候補者を決め、どう育てていくかということを考えるようにしています。これも私の重要な課題です。
 
それは驚きました!もう既に後継者を決められているんですか?引退を考えるにはまだ早すぎはしませんか?
 
いえいえ、早すぎるってことはないですよ。私は今40代半ばですが、この仕事は60歳になっても現役バリバリでいられるはずはなく。むしろやっていたら、たぶん見当違いだと思いますから。結婚式を挙げる人と60歳の感性は大きく違うでしょうから、還暦の司会者が活躍できるとしたら相当のキャラを確立しなければなりません。私はキャラはないのでダメだと思います(笑)。どんな業界でも、やはり世代交代は必須なんだと思います。
 
img108_12.JPG
そうなんですね。引退というお話が出ましたけれど、その後の夢とかビジョンは既にお持ちなんですか?
 
もちろんですよ。現在のハセガワエスティの経営を後継者にまかせ、次なる展開を確立させます。たぶん死ぬまでやり続けるだろうと思っています。次の大きな夢は、健康に関わるビジネスを手掛けていくことなんです。心と体の健康です。今の仕事にも関連していますが。
 
私の出身地、栃木の大田原市には、広大な敷地が残されています。そこに医療施設を併設した居住施設を建設したいんです。つまり、入院というかたちではないものの、必要な医療行為を受けることができる環境で、他人とチーム生活を送る場所を作りたいんです。イメージとしては、ホテルのような建物、個室もあり、皆が寛げる空間、食事ができるようなラウンジもあるような施設です。
 
そして、そこに居住する人々が各々の得意なことを持ち寄って、持ち寄り生活を送れるようにします。例えば、料理が得意な人は料理を作り、野菜づくりの得意な人は野菜づくりを、裁縫が得意な人は裁縫を、掃除が得意な人は掃除をといったかたちで、自分のためではなく人のためにも生活をする。人たちのために特技を活かすんです。「特技がなくて・・・」という人は、そこで興味を持ったことを得意な人から学べばいい。人間が生活する上で必要な作業は、すべて自分でやる。そして人のためにもやる。そんな環境を生み出していきたいんです。元々人間社会はそういう風にできていたんじゃないかと思うんですよ。要は、人間もっとシンプルに生きていきませんかっていう提案でもあるんです。
 
今まで多くの経営者の方をインタビューしてきましたが、そのような夢は初めて耳にしましたね。自分でやる、人のためにやるっていうのは、本来人間が当たり前にやっていたことだというお話ですが、阿久津社長個人の思いとはどう関連するんですか?
 
生まれた瞬間から誰もが死に向かって生きているわけですが、ある時期が来て、枯れ葉のように、パラパラと散っていく、そんな死に方をしたいなあという個人的な夢があるからなんです。
 
それというのも、10代後半に「人生ってなんだろう」とか「自分は何のために生まれてきたんだろう」とか非常に悩んだ時期がありました。色々な本を読み漁りまして、20歳の時に出た結論は、人間として生き抜き、死ぬ時の周辺の時間が最も大事であるということ。最後のために何をするのかが人生であり、最後のために生きるということこそが修業なんじゃないかという結論に達したんですね。
 
昨日までピンピンしていたのに、翌朝そっと天国に旅立っていく、穏やかに、そして静かに生命の灯が消えていくようなイメージです。
 
私が感じているのは、現在は、そこら中で病気の話題。病気が蔓延し、病気が病気を呼んでしまっているような気がしてならないのです。病気に恐怖を感じながら、薬を飲みながら騙し騙し生きていくような最後にはしたくないなあと。
 
人が人として生まれてきたような環境で、のびのび生きることができれば、最後まで穏やかに過ごせるはずだと私は考えていて、そのための環境を作り出したいんです。それには、まず資金を作らなくてはなりません。そのために、新たな事業を色々と考え、10年後くらいには夢の一歩を踏み出していたいなあと思います。
 
いやあ、恐れ入りました。阿久津社長のそのエネルギーに今日は元気をいただきました。次なる夢の実現をとても楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました。
img108_08.JPG

ご意見・ご感想をお待ちしています

経営者略歴

株式会社ハセガワエスティ 代表取締役社長
阿久津五代子氏 (Akutsu Sayoko) 

1964年 栃木県出身
2000年 株式会社ハセガワエスティに入社
2003年 同社代表取締役社長に就任

Company Data

社名 株式会社ハセガワエスティ
所在地 〒107-0062 東京都港区南青山4丁目26番2号 3F
代表者 代表取締役会長 長谷川卓史    代表取締役社長 阿久津 五代子
設立 2000年5月1日
業務内容 ブライダル関連事業
ブライダルキャスティング業務
イベント関連業務
ブライダルコンサルタンツ業務
教育事業
人材派遣業務
紹介派遣業務
レストラン事業(『開運お福ラジオ』)
URL http://www.hasegawa-st.com/

このページのトップへ戻る

語る 経営者インタビュー

各コンテンツ 最新記事

ブログ今野誠一のブログ
福山の青空の下で注いだ思い
語る経営者インタビュー
パーソナルスタイリストのプロフェッショナルとして 有限会社ファッションレスキュー
代表取締役社長 政近準子 氏
繋ぐ経営者対談
経営者に聞く!事業継承の真髄とは? 水島達也 社長 × 関田勝次 社長
集うイベント・セミナー
創業80年の老舗企業の新たな創業 ~貫くべき企業理念、守るべき業界の生態系~ マテックス株式会社
代表取締役社長 松本浩志氏 氏
今野誠一のパーソナルライフ今野誠一のパーソナルライフ
東京タワーの「称賛パワー」[イングリッシュ道場]