語る 経営者インタビュー

2008.11.20 UPInterview Vol.102

株式会社ジークレスト 代表取締役社長兼CEO 長沢 潔氏

継続的な成長に対するコミットメントの強さがベンチャー企業のありようを決める (前編)

株式会社ジークレスト 代表取締役社長兼CEO 長沢潔氏のインタビューをお届けいたします。 同社はオンラインゲーム、及び携帯電話向けコンテンツの企画・開発・運営・販売をビジネスの主軸とし、前身の会社を含めるとオンラインゲームの自社開発には約20年の実績があります。最近では、ゲームのみならず、様々なメディアとのコラボレーションを積極的に取り入れ、枠にとらわれない新しいかたちのオンラインエンターテインメントの可能性を追求し続けています。

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『MG-NET+』にご登場いただいた経営者のなかでも、オンラインゲームに特化した事業を展開している企業は御社が初めてなので、今日は長沢社長ならではの経営術について詳しくお聞きしようととても楽しみにやって参りました。
 

いえいえ、若輩者ですから経営術と言えるようなものは何も・・・。しかも、私がゼロから興した事業ではなく、もともとは弊社の株主でもあるシステムプロの一部門が展開していた事業なので。

システムプロという会社は、モバイル関連のソフトウェア開発を中心に行う一方で、実は約20年前からオンラインゲームの開発もしていました。まだインター ネットという言葉もなかった時代に、パソコン通信の回線を通じて同一サーバー上で複数人がプレイするタイプのゲームを開発していたんです。ところが、その 時代はまだ市場が全然できておらず、部門として売上げ的に社内にインパクトを与えるものでは全くありませんでした。


ところが、2000年以降オンラインゲーム市場が急速な拡大化を見せはじめ、これを機に事業を独立させたほうが市場で戦えるだろうという話になったわけで す。しかし、BtoCのノウハウがない。そこに、コンテンツビジネスを模索していていたサイバーエージェントが目をつけたわけです。オンラインゲームの先 駆者であるシステムプロとインターネットのマーケティングやプロモーションのノウハウと実績のあるサイバーエージェントとの手を組んで立ち上がったのが、 ジークレストなんです。それが2003年11月のことですね。


サイバーエージェントでは、様々な業務を経験させていただいたなかでも、マーケティングリサーチを担当していた際にオンラインゲーム市場が急に拡大し、さらに伸びていく面白い市場だぞと注目していまして。そんなときに新規事業としてオンラインゲーム事業立ち上げの話が浮上し、ぜひ携わらせてほしいと手を挙げ参画することになりました。

新卒で入られた伊藤忠商事ではインターネットやゲームとは全く無縁な、かなりアナログなビジネスを担当されていたようですね。そのギャップにちょっと驚いていますが。

無理もないです、丸太売りをしていましたからね(笑)。入社して配属され たのが木材・建 材部で、要は海外で木材を買い付けて日本に輸入し販売する。1年目は 営業サポート、2年目は営業経理を担当して、3年目にはシアトル駐在して仕入れを任されました。これがなかなか奥の深い仕事で。木材は生ものと同じような もので、直接手で触ったり、自分の目で確かめないとその良し悪しがわからない。微かに歪んでいるから柱には使えないだろうとか、節の痕の色で中が腐ってい るかを判断したり、年輪から日本家屋の柱に使えるかどうかを見極めたり。

正に木材の目利きですね。何をきっかけに新しい業界で挑戦しようという思いになられたのでしょうか。

誰もが20代半ばで将来について考えるように、私もそれから先のビジネス マン人生を意識 する時期がやってきました。結論としては、丸太のプロフェッショナル ではなく、マネジメントを早いうちに勉強したいと。しかし、伊藤忠商事にいたのでは管理職ポストに辿り着くまでには最低5年から10年はかかってしまう。 それは気が遠くなるなあ、などと悩んでいたタイミングで、同期で先にサイバーエージェントに転職していた西條氏(現ジークレスト社外取締役)から、「マネジメント層が足りないから一緒にやらないか」と声をかけてもらったんです。そして5年間お世話になった伊藤忠商事を辞め、サイバーエージェントに移ることに決めました。

 

非常に良いタイミングで話がきたんですね。西條氏からの誘いには迷うことなく、即答だったのですか?

勢いのあるベンチャー企業だったので、もちろん自分としては何の迷いもあ りませんでし た。でも、その場で即答はせず、2、3日待ってもらいました。というの も、両親に転職する旨を一応報告してからの方がいいかなと思いまして(笑)。伊藤忠商事と言えば、誰もが知る有名大手企業で、それこそ入社が決まった時は 両親が一番喜んでいましたからね。それなのに、親世代には理解しにくい事業展開をしている上に、先々どうなるのかも分からないベンチャー企業に転職するのに、一言も伝えないのは申し訳ないかなと。

【やるからにはパフォーマンスが出せる分野で挑戦したい】

ベンチャー企業で、しかもインターネット業界だったことが、思い切って飛び込んだ理由というわけですね?
そういうことです。実家は特殊機械メーカーを営んでいるんですが、それが非常にニッチな業界でして。アスファルトの敷設工事用機械なんです。私の祖父が起業したので、かれこれ70年くらいでしょうか。幼少の頃からそんな業界を眺めてきたせいか、仮に自分が事業を興すとすれば、後発の強みが活かせるビジネスじゃないと成功は難しいと感じるようになっていました。
 

丸太ビジネスも同様で、100年前から商材が変わ らないビジネスで、ビジネス形態が多少変わっていても、商材が変わらないと劇的な変化というのはなかなか起きないんです。そうすると何が起きるかという と、経験の長い人がその市場においてポジションを確立し上がっていくことができる。一方で、新規参入者は一足飛びに上がるチャンスが少ないと感じました。

 
私としては、やるからにはきちんとパフォーマンスが出せるフィールドで挑戦したいという思いが強くて、そういう意味でいうとインターネット市場の可能性は無限に広がっていることを認識していましたから、願ってもないチャンスと感じていました。
 

マネジメントが経験でき、後発であってもチャンレジ精神を大いに発揮できる市場であることを期待して転職されたわけですが、実際に入社していかがでしたか?

当然商社とベンチャー企業の雰囲気ではかなり違い、手厚く誰かが仕事を教 えてくれる環境 でないことは覚悟していました。しかも、今までに経験したことのない ようなスピード感に圧倒され、自分に成長意欲がなければあっという間に置いていかれる、早く周囲に追い付かなければ自分の存在意義がなくなるという危機感 に押し潰されそうでしたよ。

でもやると決めたからには、あれこれ悩んでいる暇はなく、とにかく前に向かって進むしかない。インターネットの構造について書かれた書籍やマーケティングに関連する書物を片っ端から読みあさることからのスタートでした。

マネジメントについては、本質を全く理解していなかったように思います。例えば、長年営業経験を積んで得た知識やノウハウを後輩に教えることの延長線上にマ ネジメントを捉えると、大きな失敗を招くことになります。マネジメントの役割をきちんと理解しておかなければ、当然ながらアウトプットは低く、本来求めら れている結果と全くずれてしまう原因になりかねないんですよ。

そのお話から察するに、かなりご苦労されたようですね。

苦労という次元ではなく、実力不足によって会社を潰してしまった苦い経験があります。子会社として音楽レーベル事業を立ち上げ、そこに経営陣の一人として関わったときのこと です。サイバーエージェントのインターネットビジネスにおける強みを活かした音楽事業展開を目論んでいましたが、当時音楽配信はまだ一般的ではなく、 iPodなどのデバイスもなく、CDなどパッケージ販売を主流としていた音楽業界からはビジネスを脅かす存在として、言葉は悪いのですが敵視されていると 感じていました。

とはいえ事業として展開する以上利益を出さなければ存在意義がないので、既存の音楽事業と同じような、いわゆるパッケージを作って流通に乗せ販売するビジネ スを展開していました。残念ながら一切の強みが存在しない事業となり、かつ経営における方向性的の策定が非常に難しくなり、最終的にその会社は解散という かたちになってしまいました。結局インターネットと音楽の融合という側面から新しいビジネスを創出することができずに終わってしまったわけです。

 
【結果を残すのが経営陣の役割である】
 
それは市場自体がまだ追いついてはいない状況だったとも言えるのではないですか。
 

そういう面もなくはないのですが、それは言い訳に過ぎません。どんな状況においても、結 果を残すのが経営陣の役割だと思いますので、結果的に何も残せなかったというのは全面的に経営陣の責任です。そこでの私の最大の失敗は、中途半端な責任感 で走り続けてしまったということだろうと思います。事業の方向性を見出せないのであれば、見出せる人を探すか、或いは自分がポジションを降りさえすれば良 かったのに、現状を何とかしなければという思いだけが強く、居座ってしまったために何のプラスにもならなかった。お恥ずかしいことですが、経営感覚が非常 に未熟でした。

 

さらには、事業の方向性を打ち出せず、うまく行かなくなっている状況に対して、撤退のタイミングを決めなかったという反省もあります。経営者以外の誰が撤退 を決断するのか。結局ズルズルとうまくいかない状態を引きずってしまい、損失を膨らませる結果にもなった。経営者として、本質的に決断をしなければいけな いことを放棄してしまったという思いがあって、実は今でも強い後悔の念を抱いているんです。

 
でも、きっとその時のご経験が今の会社経営に活きていますね。
 

おっしゃる通りです、それは今経営する上で反面教師になっています。何が駄目だったのか、どうすれば良かったのかということが体に感覚的に 残っていますし ね。 会社がどうやったら潰れるかということを一度身をもって体験してきていますから、そういう意味では今強みにできているかな(笑)。

 
そうは言っても、潰してしまった後はもぬけの殻になりました。物事をポジティブに考えられなくなり、感情のコントロールができなくなって、いわゆる鬱状態に陥った時期も正直ありました。でも、そのどん底から救ってくれたのもまた仕事でした。
 

ご意見・ご感想をお待ちしています

経営者略歴

株式会社ジークレスト 代表取締役社長兼CEO
長沢 潔氏 (Nagasawa Kiyoshi) 

平成 8年 4月  伊藤忠商事株式会社 入社
平成13年 5月  株式会社メールイン(サイバーエージェント子会社) 入社
平成13年11月  株式会社インター・レコーズ(サイバーエージェント子会社) 入社
平成14年 4月  同社 取締役就任
平成15年 1月  株式会社サイバーエージェント レーベルプロジェクト統括 就任
平成15年 5月  同社 オールナビプロジェクト 配属
平成15年12月  株式会社ジークレスト 取締役 就任
平成16年10月  同社 取締役副社長兼COO 就任
平成18年 4月  同社代表取締役社長兼CEO 就任

Company Data

社名 株式会社ジークレスト
所在地 〒150-0043
東京都渋谷区道玄坂1-10-8 渋谷野村ビル2F
代表者 代表取締役社長兼CEO 長沢 潔
設立 2003年11月4日
業務内容 オンラインゲームの企画、開発、運営、販売
携帯電話向けコンテンツの企画、開発、運営、販売
URL http://www.gcrest.com

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