語る 経営者インタビュー

2008.11.27 UPInterview Vol.102

株式会社ジークレスト 代表取締役社長兼CEO 長沢 潔氏

継続的な成長に対するコミットメントの強さがベンチャー企業のありようを決める (後編)

株式会社ジークレスト 代表取締役社長兼CEO 長沢潔氏のインタビューをお届けいたします。 同社はオンラインゲーム、及び携帯電話向けコンテンツの企画・開発・運営・販売をビジネスの主軸とし、前身の会社を含めるとオンラインゲームの自社開発には約20年の実績があります。最近では、ゲームのみならず、様々なメディアとのコラボレーションを積極的に取り入れ、枠にとらわれない新しいかたちのオンラインエンターテインメントの可能性を追求し続けています。

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さて、次は御社についてお伺いしていきたいと思います。システムプロとサイバーエージェントの合弁会社として設立されたわけですが、何名でスタートを切られたのですか?

サイバーエージェントから私と西條氏の2名、システムプロからは6名の計8名の小さな組織から始まりました。立ち上げの当初はもともと西條氏が社長を勤め ていて、私は常勤役員として執行の最高責任者という立場で参加しており、のちに社長業を引き継ぐことになります。冒頭でも申し上げましたが、事業を引き継 いだといっても、もともと一部署で非常に小さく展開していたため、売上げ規模も年間500万円程度で、粗利で赤字が出るようなビジネスでした。つまり、や ればやるほど損が膨らむというビジネスモデルになっていて、このままだと会社は潰れるだろうという感覚がありました。音楽レーベル事業での苦い経験があり ま すから、潰れない域までなんとか引き上げなければというプレッシャーで、立ち上げから1年間は1日たりとも心が休まる日はなかったです。
 
また、システムプロの社長が自ら立ち上げた思い入れのある部署だとも知っていたので、手放そうと決断したのには相当な勇気もいったでしょうから、それを思うと尚更何とか踏ん張らなければと焦る気持ちもありました。
 
そのような会社の状況をスタッフの皆さんはご存じだったのでしょうか?
 

システムプロから来たスタッフは元からオンラインゲー ムに関わっていた人間でしたので、当然認識していたと思います。ただ、言い方が悪いのですが、スタッフ 全員の気持ちが負け犬根性の塊のようになってしまっていて。でも、それは無理もない状況だったんです。システムプロがソフトウェア開発事業で順調に売り上 げを伸ばしていくなかで、オンラインゲーム事業は社内では比較的マイナーな存在で、損を出さないように小さくまとまってしまっていたようなんです。

【ビジョンを示す】


しかし、数年も経たずに利益を上げ、しかも組織規模も当初の10倍以上という急成長を遂げているというのには、長沢社長の特別な取り組みがあったからだと思うのですが。

そのあたりの秘訣をぜひお聞きしたいですね。まず実行されたのはどのようなことですか?

まず取り組んだのは、スタッフのマインドセットを変えることでした。つまり「どうせやっ ても駄目なんだ」という考えを捨ててもらうという意味です。そのため には"ビジョン"、つまり「こうするんだ」という意思を私が明確に示すことが大事だと考えました。そして、その過程で信頼関係を築くことで何かが変わって いくんじゃないかと信じていました。例えば、スタッフが「チャレンジして失敗したときに、責任取らされるのは自分たちだ」と感じてしまう風土であれば誰も チャレンジしようと思わないですよね?チャレンジする意欲を引き出そうと「最終的に失敗したとしても経営者である私が責任をとる」という宣言をしました し、「チャレンジしないことは悪だと思ってください」というメッセージを発信し続けてきました。
 
ということは、長沢社長が細かい対策を練るというよりは、スタッフが自分たちで考えていけるような雰囲気作りに力をいれたんですね。

そもそも私自身がオンラインゲームの運営を経験したことがなかったので、エキスパートで あるスタッフの意見を聞くことしかできないわけですよ。チャレンジし てもらうしか、環境を変える方法はなかったというのが本音です。今うまくいっていないことはどうやればうまくいきそうか、数字を見せてここまでくれば黒字 化させるには何が必要かと徹底的に議論していきました。ジークレストの主軸事業としてオンラインゲームを展開している以上、他に頼るものはなく、自分たち の頭で利益を上げる方法を考えていかなければならない、だから一人ひとりが考えて儲かる会社にしていこうとをくどいほど訴えました。

長沢社長の熱意というか、真剣さがスタッフの方々の心にすぐに響いたのですか?

企業として今ここまでになっているということは、間違いなく響いてくれたからだと思います。でも、それは私の言葉に耳を傾けようとしたスタッフの努力もあっ たからこそだと思います。既存のコンテンツの中でも手の打ちようのないものあり、それらは思い切って切り離し、その代わりに新規コンテンツを開発していく という策も打ち出していきました。たとえ目の前の売上500万円が400万円になり、収益が20%減になるかもしれないが、将来的には100万円以上の価 値を絶対に生み出すはずだと信じてチャレンジしていこうと。何かあれば私が全部責任を取るから絶対やろうと皆で腹を決め、そうやって今の事業の礎を築いて いったのです。

【組織規模に応じて、マネジメント方法を変える】
 
企業の急拡大によって組織が不安定になったという話を一般的によく聞きますが、現在組織作りにおいて何か気をつけていることはありますか?

私が肌で感じているのは、組織規模が30名までのとき、50名、それから100名 の場合では適するマネジメント方法が異なるということです。組織が大きくなっているのに、ずっとマネジメント手法を変えないでいるといつか必ず綻びが生じ て、組織が崩壊する。そういう意味では、100名体制になった今、新たな組織づくりの課題が見えてきたというところです。


これだけ短期間に100名規模の組織にしてこられたわけですが、それぞれのポイントではどのようなことを大事にされていたのでしょう?
 
30名くらいまでの組織を考えた場合、パッと顔を上げただけで社内全体が見渡せます。
誰 が来ているとか、誰が休みだとかね。誰と誰は最近うまくコミュニケーションが取れていないなんていう微妙な空気も、社内をちょっとフラフラすればすぐに分 かるんです。だからこそ、陣頭指揮が取りやすい。例えば、「昨日まではA方式でやっていたけれど、今日からはAを止めてB方式でいく」というような急な方 向転換も割としやすい。もちろんそれに対して不満に感じる人もいるけれど、そういう人には「私が意図するところは××であり、そのなかで君の役割は××。 非常に重要なポジションだから、どうか納得してほしい」と直接対話を図り、理解をしてもらえるまで惜しまず時間をとる。トップの声も組織内に届きやすい し、逆に現場の声も吸い上げやすかったわけです。

ところが、50名規模になると、私の眼の届かない範囲が少し出てきます。経営陣が認識し ない不満なども見え隠れして、ミドルマネジメントの存在の必要性と なってきます。それでもプレイングマネジャー、もしくは8:2の割合でプレイヤーとマネジャーが務まる程度で問題ないレベルでした。

グッと難しくなるのが、やはり100名規模からですね。はっきり言って、ミドルマネジメントなくして会社は成り立たない状態になります。組織力を発揮する上で、ミドルマネジメント層の組織の中でのハブ的な役割は欠かせません。

【ベンチャーマインドを発揮できる環境が強い組織を作る】


とすると、今の状況としてはミドル層に期待感を持っていると?


そうですね。とにかく一人ひとりに"ミスター・ジークレスト"になってほしいというのが私の切なる願いです。単なる中間管理職的な意識ではなく、ジー クレストという大きな組織の中で、どこに向かおうとしていて、その先はこうありたいという考えがミドル層の中にきちんと存在していて、それがジークレスト の目指す未来像と合致しているという状態。それが理想じゃないですかね。そして、規模に関わらずベンチャーマインドを発揮できる環境を維持すること。これ があれば、とても強い組織になると考えているんですが。

長沢社長は、"ベンチャー企業"についてどのような捉え方をされていますか?

一言で言うと、継続的な成長に対するコミットメントの強さがベンチャー企業のありようを決めると考えています。一 般的にいわれるベンチャー企業とは、今年より来年、来年より再来年と常に高い目線を持って目標を立てています。だからこそ、スピード感があるし、成長に対 して貪欲になれる。 "ベンチャー企業"の看板を掲げた以上、成長意欲を失うことはありえないと考えています。昨今「急成長企業」して注目され関心を持っていただく機会も増え たことは非常に嬉しいことですが、"成長"は何か特別ではなく当たり前のことで、それこそがジークレストのアイデンティティーであり、存在価値なんです よ。

成長せずして企業の存在価値なし、ですか。御社の経営理念「世界中の人々に『驚き』『喜び』『感動』を提供し続ける、オンラインエンターテインメントの リー ディングカンパニーたること」という言葉からも、業界を牽引していくような存在になりたいという強い意気込みを感じます。


ありがとうございます。以前は「ナンバーワンカンパニーを目指す」としていましたが、リーディングカンパニーという言葉に変更しました。"ナンバーワン" と は、一般的に規模とか売上げを示す傾向があり、私たちは規模云々よりも、人々がインターネットを活用して余暇を過ごす際に、どれだけ新しい価値を提供でき るかで勝負していこうと。


逆をいうと、新しいものを生み出せなれば存在意義が見出せないと思っていて、そういう意 味で業界をリードするような存在でありた いという気持ちから"リーディングカンパニー"にしました。でも、どんなに新しいチャレンジを続けていたとしても、業界売上高100位の企業が"リーディ ングカンパニー"と呼ばれることは、まずないでしょうね(笑)。リーディングカンパニーであるためには、定量的な面でもきちんとした目標を持たなければな らないと思っています。

「世界中の人々に・・・」ということも掲げていらっしゃいますが、それはもちろん海外展開も視野に入れておられるからですよね。


将来的に実現していきたいとは思っています。コンテンツビジネスは簡単に国境を超えるこ とができる、アニメや漫画がその良い例です。日本初のアニメや漫画が 海外で受け入れられている状況や、海外の映画やドラマが日本で受け入れられているように、コンテンツは海を渡って成功できる可能性を秘めているのです。

だからこそ世界へも挑戦したいとウズウズする気持ちもありますが、今はビジネスの軸足は 日本におき、まずは日本で認められることのほうが先決です。こだわり 抜いたコンテンツを世に送りだし、磨き続けられる体制がしっかりと整ってから実行に移すべきだと考えています。一歩一歩着実に進めていかないとね。

例えば、外国産のコンテンツを日本で展開する場合において、ローカライズならぬカルチ チャライズ、つまり文化的な側面も考えて日本仕様にかえていきます。分 かりやすい例としては、『トリックスター』というオンラインゲーム。韓国産タイトルなので、登場人物などのセリフも含め全部翻訳する必要があります。その ゲーム世界にある販売員が登場、プレイヤーに話かけるというシーンがあります。そのまま翻訳すると「いらっしゃいませ、おひとついかがですか?」となる。 でも、キャラクターに意味合いを持たせようと関西弁「ええもん入ってまっせ、おひとついかがでっか?」とすれば、途端にゲームの世界感に深みが出る。その ように、細部までこだわってコンテンツを提供していくことが、ジークレストのゲームなんだということをまずは世に知らしめたい。同業他社ではなく、ジーク レストが手掛けるからこそコンテンツの魅力が高まるところまで結果が出せなければ、私たちのいる意味がない。他社と同じ結果しか残せないのでれば、仕事を している意味がないと思っているので、徹底したこだわりを見せつけたいという思いがあります。

こだわり抜くジークレストという認知を広め、プライドを持って世界に広めていけるようなコンテンツを生み出していければ本望です。

そういったジークレストならではのコンテンツを誕生させるために、今後はどのような組織風土を目指していますか?


ビジネスの可能性を限定することなく、社内のあちらこちらからアイデアが生まれ、新しい ものを生み出せる環境にしていきたいですね。若手社員が希望や誇りを 持てる会社になり、それぞれの成長を自分自身でも実感できる場が理想です。そして、会社の継続的な成長を意識し、そこに自分がどう貢献できるのかと考えら れるような組織でありたい。

そのためにも、私の役割として今大切にすべきことはビジョンを示すこと、そして社員とのコミュニケーションを強固にすることだと考えます。

長沢社長のお話に引き込まれているうちに、そろそろ終了の時間が近づいてきてしまいました。最後に、これから起業家を目指そうという方々へメッセージをいただけたら嬉しいですが。

経営者としては駆け出しの、しかもまだまだ修行中の身である私が言うのもおこがましいのですが・・・。普段から自分自身に言い聞かせていることでもあるん で すが、経営とは実行すること。実行に移す前から、あれこれ悩むことに時間を費やし、前に進めないことほど勿体ないことはない。もちろんしっかりと考えるこ とは後に結果をレビューするためにも重要だけれど、どのポイントまで考えればよいかだけは考え、考えてもしょうがないポイントにきたら、もうやるしかな い。なんて言うと偉そうですが、もちろん私にも割り切れないものも当然あって、そこに時間を費やしている自分を発見すると「またか・・・」とひどくがっか りするんですけどね(笑)

経営者たるもの悩みはつきものですから、非常に参考になります。本日は貴重なお話をありがとうございました。


 (記載内容は2008年11月時点における情報です)

 

ご意見・ご感想をお待ちしています

経営者略歴

株式会社ジークレスト 代表取締役社長兼CEO
長沢 潔氏 (Nagasawa Kiyoshi) 

平成 8年 4月  伊藤忠商事株式会社 入社
平成13年 5月  株式会社メールイン(サイバーエージェント子会社) 入社
平成13年11月  株式会社インター・レコーズ(サイバーエージェント子会社) 入社
平成14年 4月  同社 取締役就任
平成15年 1月  株式会社サイバーエージェント レーベルプロジェクト統括 就任
平成15年 5月  同社 オールナビプロジェクト 配属
平成15年12月  株式会社ジークレスト 取締役 就任
平成16年10月  同社 取締役副社長兼COO 就任
平成18年 4月  同社代表取締役社長兼CEO 就任

Company Data

社名 株式会社ジークレスト
所在地 〒150-0043
東京都渋谷区道玄坂1-10-8 渋谷野村ビル2F
代表者 代表取締役社長兼CEO 長沢 潔
設立 2003年11月4日
業務内容 オンラインゲームの企画、開発、運営、販売
携帯電話向けコンテンツの企画、開発、運営、販売
URL http://www.gcrest.com

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