- HOME
- 語る 経営者インタビュー
- Interview No.109

2009.07.09 UPInterview Vol.109
家族的な風土を目指したい (前編)
シナゲート株式会社 代表取締役 梅原健氏のインタビューをお届けします。
WEBに特化したシステム開発とWEBサイト制作を行い、今年で4期目を迎える同社。
“公私混同“当たり前の家族的な社風にしていきたいという若き経営者の声をご紹介いたします。
- 前編
- 後編
梅原社長と初めてお会いしたのは、ある異業種交流会の場でしたよね。参加者の方々と積極的にお話されている姿が印象的でしたので、てっきり営業畑出身の方だと。それがエンジニアの方と知り、とても意外でしたね。
今野さんにはそんな風に映っていたんですか。確かに、技術職の中ではかなりおしゃべりの方かもしれません(笑)。でも、学生時代からエンジニア志望だったわけではなく、実は税理士になりたいという野望もあったんです。そのために大学の商学部に入学したくらいですから。
なるほど。でも、今は全く違う職種に就かれておられますね。
就職活動をする際に行った業界研究を通じて、今後どの業種においても“IT”が必要不可欠な存在であると確信しました。企業の生産性向上や業務改善を行う上で重要なものとなりますし、コンサルティングする上でも重要な要素になることは間違いないだろうと。何をするにもまずは自分でシステム構築ができるようになればそれが強みとなり、プロとしてどんな業界でも仕事ができるようになるだろうと思い、技術職の道を選びました。
新卒で入社したのは従業員500名規模の中堅SI会社、そこでプログラマーやSEというポジションで4年間の経験を積みました。その後退職し、会社を設立するまでの1年間はフリーのエンジニアを経験して2006年5月にシナゲートを立ち上げたわけです。
前職で、一番印象に残っている仕事はどのようなものでしたか?
入社して3年目から担当させていただいた業務が私にとって大きな転機となりました。某大手レコード会社所属のアーティストの関連商品が購入可能なポータルサイトの立ち上げに、プロジェクトメンバーとして関わらせていただいたんです。お客様先に常駐し、システム開発や機能追加など、ショッピングサイト全体の構築からリリースまで、約2年間に渡り関わることができました。
もともとシステム設計や構築は好きではあるのですが、黙々と作り続けるよりは、お客様に何か提案しながら業務を進めることにやりがいを感じる方でした。また、またショッピングサイトの先にいるユーザーのことを考えながらシステム開発ができることに、かなりモチベートされましたね。
常駐先の社員の方の中には独立心旺盛な方が非常に多くて、起業に関する話題が飛び交うこともしばしば。自社にはない社風に私は大いに刺激を受けました。そんな環境に身を置いていたせいか、独立することが遠い世界のことではなくなっていったんだと思います。
梅原社長が独立を決意した頃のことをお伺いしたいのですが。
常駐先で刺激を受けたというか、独立へのスイッチが押されたのは確かなのですが、昔から自分で組織を一から作り上げるプロセスに生きがいを感じるタイプだったと思うのです。
例えば、好き好んでよくやっていたゲームはシミュレーションゲームとか戦略系のもの。徐々に強くなっていく過程を楽しみ、周囲に敵や乗り越えるべき壁がなくなった途端やる気がなくなるタイプでした。学生時代も積極的にサークルの立ち上げにも関わってきましたし。
自分がゼロから始め、組織にしていく、そして集まってくれたメンバーと苦労しながらでも組織のレベルを高めていく行為を経験していきたいという思いが強くなっていったんだと思います。
苦労をそんなに苦労とも思わない。苦労する過程において馬力が出るタイプなのかもしれないですね(笑)。

独立するなら、ウェブ系システム会社を・・・というのは当初から考えていたのですか?
実は、居酒屋を経営してみたいなんて淡い夢を思い描いていた時期もありました(笑)。でも、既に成熟している業界であり、未経験の私がどこまで結果を残せるのかと多少の不安がありました。
それであれば、自分がキャリアを積んできた業界、しかもまだまだ未成熟な業界だからこそ、挑戦していくことに価値を見出せるんじゃないかと思ったからです。
IT業界はまだ未成熟だと?
そう思っています。どういうことかというと、制作費や開発費などの価格設定に差があり過ぎるからです。例えば、ウェブサイトの1ページに制作費用10万円を提示している企業もあれば、数千円のところもある。つまり、価格設定がまだ水物ということです。
それに比べて、居酒屋を例にあげると、大体相場が決まっていますよね。同じようなメニューであれば、店によって価格が天と地ほど違うことはそうないはないですよね。もし差があったとしても、「これは高いな」とか「すごく安い!」と判断できる業界になっている。しかし、ウェブやシステムに関しては、業界以外の方からすれば妥当な金額かどうかは、まだまだ判断しにくいですよね。
つまり、価格の標準化が成熟のバロメーターだということですね。
そう思います。ただ、最近はウェブ制作会社で自社サイトに価格表を掲載しているところが増えてはいます。一方で、システム会社で掲載しているところはまだ少ないのではないでしょうか。システムの値段というよりは、開発プロジェクトに関わる1人当たりの費用月額(人月単価)を掛け合わせて、仕事量で費用を算出する『人数×時間(月)で○○円』とか、『別途見積り』をという表示を目にすることの方が多いと感じます。
それというのも、この業界は多重下請構造になっていて、業務の二次請け、三次請けが当たり前の世界なのです。日本でこの多重下請け構造が発達してきてしまった一番の背景は、IT人材の需要がプロジェクト毎に大きく変動するからなんです。ひとつのシステムを大量生産するのではなく、顧客のニーズに合わせて個別システムを受託開発で徹底的に作り込むケースが多いので、開発工程ごとにも必要要員数が大幅に変動します。
一方で、日本は雇用の柔軟性が低いので、業務量に応じて社員数を増減することが難しい。ということは、結局企業間で仕事を融通しあって調整せざるを得ないわけで、その結果、必要な要員を確保するために、下請け構造の多重度が増えることになるのです。
しかも、多重構造により中間マージンが発生し、技術者個人の報酬は低くならざるを得ない。月の稼働時間は長いにも関わらず、報酬は少ない。劣悪な労働環境だというレッテルが貼られている業界でもありました。おそらく、これからは多分流れは変わってくるのではないかと想像しています。
だからこそ、本当の競争はこれからでしょう。その競争の中で、重要だと思っているのは、経営者が人材を心から大切にし、育成していき、各社の持つスキルを開示し、適正な契約をし、社員に適切な報酬と労働環境、やりがいを与えること。そして、それこそが多重下請け構造を改善していく道でもあるのではないかと思うのです。
いいですねえ。この業界を変えるんだという強い使命感がグッと伝わってきますよ。
ありがとうございます。ですから、うちは自社開発で半分以上の売り上げを立てるようにしています。大手システム会社が受注したプロジェクトに、人月単価を高く設定して売り上げを立てれば、ある程度安定はするとは思うのですが、そこに頼りきりにはしたくないんです。

それにしても、20代でよく独立する気になりましたね。私の場合、もっと経験を積んでからと考えていたら、あっという間に40歳になっていました。
そこそこはやれるんじゃないかという根拠のない自信はありました(笑)。ただ、資本金はたったの50万円からのスタートでしたから、キャッシュが直ぐに底を突きまして。50万円なんて、諸費用と自分への給料を支払ったら、もう終わりじゃないですか。「あれ、もう終わり?」と思わず笑ってしまう一方で、「おいおい、大丈夫か?」と少々焦る気持ちも隠せませんでした。多くの経営者が通ってきた道だとは思いますが、会社に貸付をしながら増資して、を繰り返している状態です。
私も創業して初めの2年間はそうでした。なんとか回るようになったのは、3年目くらいからでしたね。
今野さんさえも私と同じようなことを経験されているんですね、それをお聞きして救われた気持ちになります。この4月で4期目を迎えましたが、まだまだプレイング社長から脱することができず、自らも手を動かしてお客様の仕事に向かっている状況です。
まだ小規模な組織ですから、社員に私の背中を見せることで、会社の売り上げを上げるしかないと思っています。ちょっと不器用な経営スタイルかもしれませんね。
いえいえ、そんなことはないと思いますよ。会社を設立した時には、将来はどんな会社にしたいという思いをお持ちでしたか?
日本のIT業界は世界と比較して遅れているとよく言われていますが、私個人の意見としては、遅れていることだけに引け目を感じる必要もないんじゃないかと思うのです。日本には日本の良さがある。既存のものを、さらに改良するアイデアや技術力はずば抜けています。かつての製造業がそうだったように、このIT業界でも改善を積み重ねていき、日本初の世界に通用するようなレベルのシステム開発とウェブ制作を行える企業を目指したいと思い続けています。
夢は日本初ですか!
そうですね。その夢を実現するためには、闇雲に規模拡大を狙うのではなく、技術力を上げられる組織を着実に作り上げていくことを大事にしたいと考えています。それを「シナゲート」という社名に込めています。相乗効果を意味する“シナジー”と門を意味する“ゲート”を合体させた造語なのですが、つまり、社員各々の能力や技術力が集まって相乗効果でより良いものを作っていきたいということなんです。
手前味噌になりますが、うちの社員はお客様からの信頼度が非常に高いんです。よく言われるのが、「社長の能力より高い人は組織に入ってこない」とよく言われますが、うちの組織に限っては当てはまらないですね。
自社の社員を、人前でそこまで褒めることができる梅原社長の姿勢が私は好きです。
ますます会社の将来が楽しみになってきますね。競争が激化するIT業界ですが、御社のサービスの強みはどんなところにあるとお考えですか?
小規模ではありますが、システム開発とウェブ制作をワンストップでできることだと考えています。この業界のユニークな点だと思いますが、システム開発やウェブ制作のどちらか一方を専業にしている企業が多かったんです。
例えば、ウェブ制作専業にしている企業の場合、デザイン主体で制作するので見栄えの良いサイトにはなるけれど、ユーザーにとっては実は使いにくいシステムだったりするわけです。一方、システム開発を得意とする企業の場合、サイトを支えるシステムは高機能でも、ユーザーの目に直接触れるフロントエンドのデザイン力が低かったりするのです。ケースによっては、システムは自社で開発するが、ウェブ制作は他社に外注してしまうこともあるくらいです。

その点を考えると、うちは小規模でありながら、システム開発にもウェブ制作にも自信を持っているということが大きな売りだと考えています。自社ですべて対応できるため、制作、開発コストを抑えながら、お客様の要求に合わせて迅速に対応することができる。この業界で生き残っていくためには、ウェブとシステムのどちらも高いレベルで提供できることが必要不可欠な要素になっていくと考えています。
なるほど。 ワンストップで開発も制作も可能で、しかも高いクオリティのものを期待できることを売りにされているんですね。
そうですよね。ただ、お客様から要求されるニーズは年々レベルが高くなってきています。それは、ウェブそのものが消費者のライフスタイルの中に溶け込んだことにより、商品やサービスを提供する側もウェブを重要な販促ツールと捉えるようになり、ユーザー視点に立ったものと考えるようになってきたからだと思います。
一昔前の制作業界は、本を読んで少し勉強すれば「ホームページが作れる」と言えるようなレベルだったわけです。それがここ数年一気に上がってきていますから、単に制作ができるくらいでは淘汰されていってしまうのではないでしょうか。
そうでしょうね。デザイン力と機能性は著しく進化していることは肌で感じています。今から9年ほど前に、知人の会社に頼んでマングローブのホームページを立ち上げたんですね。初めてのホームページだったので、今でも強い思い入れがありますが、仮にその頃のものと現在のホームページと差し替えたら、「この会社にコンサルティングをぜひお願いしたい」と思っていただけるか自信が持てないですね(笑)。
さて、御社が今後手掛けていきたいと思っているものはなんでしょうか?
一番手掛けたいと思っているのは、“ポータルサイト”です。MG-NET+にもインタビューが掲載されているネクスト・アイズさんが運営する、注文住宅のポータルサイト『ハウスネットギャラリー』の制作からシステム開発のお手伝いをさせていただいたのですが、非常にやりがいを感じましたし、うちの技術力の可能性も高まった案件でもありました。
小野社長やディレクターの方と何度も打ち合わせを重ね、「こういう方針で日本一の注文住宅のポータルサイトを目指していこう」と同じ志を持たせていただき、そのための機能追加や運用アドバイスまでさせていただいています。それこそが、シナゲートの社員と私の喜びでもあります。
制作や開発して納品して終了というのではなく、その後の運営を知恵を出し合いながらお手伝いさせていただくことができる、それがポータルサイトを手掛ける醍醐味でもあると思うのです。
そうですか。お客様と一緒になって、お客様のサイトを育てていくことも、御社の強みになるのではないでしょうか?
ありがとうございます。今まであまり意識していなかったのですが、そうなのかも知れませんね。
既存のお客様から継続的にご依頼をいただけることが私の理想でもあります。「先日作って貰ったサイトだけど、今度こんなことをしたいから一緒に考えてくれないか?」と相談を受ける。そんな風にして、お客様一社一社との長いお付き合いを続けていきたいと思っています。
経営者略歴
シナゲート株式会社 代表取締役
梅原健氏 (Ken Umehara)
1977年沖縄県生まれ。
専修大学商学部商業学科卒。
大学卒業後、独立系中堅SI、1年間のフリーランス期間を経て、
2006年5月、シナゲート株式会社を設立。
Company Data
| 社名 | シナゲート株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 〒101-0031 東京都千代田区東神田3-6-6 メビュウス高島 2F |
| 代表者 | 代表取締役 梅原 健 |
| 設立 | 2006年5月1日 |
| 業務内容 | Webシステム開発・Webサイト制作事業 システム要件定義・設計・開発 コンサルティング・プランニング Webサイト分析 SEO・SEM Webコンテンツ制作 Webサイトマネジメント Webアプリケーション開発 サーバ管理 サポート業務 |
| URL | http://www.synergate.co.jp/ |
今野誠一のブログ- 福山の青空の下で注いだ思い
経営者インタビュー-
パーソナルスタイリストのプロフェッショナルとして
有限会社ファッションレスキュー
代表取締役社長 政近準子 氏
経営者対談- 経営者に聞く!事業継承の真髄とは? 水島達也 社長 × 関田勝次 社長
イベント・セミナー-
創業80年の老舗企業の新たな創業 ~貫くべき企業理念、守るべき業界の生態系~
マテックス株式会社
代表取締役社長 松本浩志氏 氏
今野誠一のパーソナルライフ- 東京タワーの「称賛パワー」[イングリッシュ道場]







