語る 経営者インタビュー

2009.07.30 UPInterview Vol.110

株式会社ネットマン 代表取締役社長 永谷研一氏

人が出会い学び合う場を次々に創造していきたい 、元気で愉快な日本を取り戻すために。 (後編)

株式会社ネットマン 代表取締役社長 永谷研一氏のインタビューをお届けいたします。
同社は、ITを活用し人や組織が成長する環境づくりを提供すると同時に、オトナたちの学びの場「知恵組」の運営も手掛けています。
それぞれの立場や時間、場所に拘らずに仕事ができるネットワーカーで構成されるプロジェクトを作り出し、ITを活用しビジネスを推進するのがネットマン・スタイル。ネットマンが手掛ける商品、仕掛けるサービスは、企業や置かれた環境を超えた人たちの思いや知恵がぶつかり合って産み出されたものなのです。

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すべては日本を元気にしたい!という思いから展開されていることが非常に伝わってきます。さて、そのネットワークづくりの原点についてお話を伺いしたいと思いますが。
 
私がSI会社にて基幹システムのエンジニアとして働いていた頃のことです。今から15年程前のことになりますが、デスクトップパソコンを購入し、そこに低速モデムがついていたこともあり、パソコン通信というものを経験しました。その数ヶ月後、生まれて初めてインターネットの世界に足を踏み入れ、「なんだ、これは!」と衝撃を受けました。夜な夜なインターネットを弄っていると、技術者が自身の作品を自由に発表するサイトを発見したのです。当時の日本には未上陸だったJavaの作品などもあり、私にとってはワクワクする世界が目の前に広がっていました。
 
自分の中での感動を抑えきれず、作品に記載されていた発表者のメールアドレス宛に勇気を振り絞って「your site is cool!」というメールを書き続けていました。そうすると、20人に1人くらいは良い返信があり、そこからコミュニケーションがスタートし、あっという間に世界中に今でいうメル友ができていきました。
 
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そんななか、仕事で大規模な提案があり、他社とのコンペになりました。当然ながら、Webの最新技術を活用したシステムを提案し、見事受注。しかし、そのシステムを開発するに必要な最新技術を使える人間が日本にはいませんでした。そこで、メル友である海外の技術者に連絡し、開発に協力してもらいながら、数か月後に見事リリースすることに成功しました。
 
受注額は数千万円だったにもかかわらず、協力してくれた技術者には自分のボーナスから30万円ほど送金しただけでしたから、会社にもだいぶ貢献しましたね(笑)
 
そのプロジェクトを通じて感じたのが、世間一般で言われていた「技術者が足りない」というのは間違いであるということ。単に働き方のモデルがないというだけで、技術者は十分足りている。必要なのは、マネジメント技術だけじゃないかと。プロジェクトをオープンにして、業務分担さえしっかりしていれば、ネットワークを活用してプロジェクトは回っていくということに気付いたのです。それこそが理想的なワークスタイルだ!と。
 
それで会社を立ち上げようと思われたわけですね。
 
とにかく勢いだけで起業したようなものですが(笑)。インターネット黎明期でしたから、プロジェクトをオープンにして技術者に声をかけると、ワーッと勢いよく集まるんです。そしてプロジェクトの業務を細分化して技術者に割り当てていく。今では業界でも当たり前になっていますが、オフショア開発ですね。
 
技術者の中にはフリーの方もいましたし、サラリーマンの方がセカンドビジネスとして、土・日だけ業務を行う人もいました。また、主婦の方もいて「子育て中だから土・日しか働けないので、プロジェクト型の働き方が夢でした」なんて言われて、すごく嬉しい気持ちになりました。ところが、良い状況というものはそう長く続かないものだということを思い知らされました。
 
どういうことですか?
 
会社を立ち上げた頃は、IT業界自体が急成長し始めた頃でした。ネットワーカーたちは、自分の与えられた業務を納期までにきっちりこなし、インターネット上で請求書さえ送ればそれで終わりですよね。ところが、案件を獲得し、業務を分解し、ネットワーカーに配分し、チェックなどを行ううちの社員たちは多忙を極め、振り返ると連日の徹夜で目を真っ赤にし、体調を崩して倒れるような状況に陥ってしまいました。
 
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ネットワーカーの方々にとっては幸せな環境で、逆に社員の方にとっては不幸せな環境になってしまっていたんですね。
 
本当にそうでしたね。そうこうしているうちに、それほど高い技術力がなくても「Webデザインができます」とか「プログラムを組めます」と簡単に言う技術者も増え、言葉は悪いのですが、質の悪いネットワーカーも出てくるようになりました。
 
例えば、マネジメントルールを守らない人、納品前なのに新しい仕事を見つけたから半分払えと要求してくる人、あるいは、途中で仕事を投げ出したのに請求だけを繰り返し、いくら電話をしてもつかまらない人など、私の想像を遥かに超えた人たちと出会ってしまいます。
 
私自身はごく純粋に、「インターネットは、基本的に夢をかなえる道具であり、人と人とが出会うための道具である」と、このプロジェクトを一緒に手がけたいという想いが重なり合っていくものだと信じていたにも関わらず、心無い人たちの行為のために裏切られたような気持ちが強くなり、ネットワーカー性善説から性悪説に変わってしまったのです。そして、その頃から、自社の社員を積極的に採用し始めたのです。
 
なるほど。
 
ネットワーカーにあまりにも期待しすぎて、その反面落胆も大きかったんですよ。ですので、社員を一気に20名くらいを採用してしまいました(笑)。そうしたらですね、次第に社風が悪くなっていったんですよ。
 
なぜかというと、もともといた古株社員と、大量に採用した社員との関係があまりうまくいっていかなかったからです。要はひとつの目標に向かって、組織を引っ張っていくことができなかったんですよね。すべては私の責任なのですが、大量採用したと同時に売上げもドーンと上がりましたが、その後直ぐにドーンと奈落の底に突き落とされました。
 
その時なんです、初めてクレドというものを作ったのは。現在のクレドは、第3バージョンくらいのものですが、初期のクレドは今思うと笑ってしまう内容でした。「自分たちは格好良く仕事をする」みたいなとんでもないものでしたから(笑)。当時のエンジニアと言えば、服装も気にせず、働く環境さえ気にしないようなところがありましたからね。若い女性社員から「ネクタイも締めずに働くなんて・・・こんな汚い会社で働きたくありません」と冗談交じりで言われたものですから、「格好にも配慮した方がいいのかな?」という思いつき程度でクレドにしてしまったようなものです。
 
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組織の成長とともにクレドも進化させていくものだと思いますから、創業から10年の間に何度も見直されてこられたのも当然だと思います。
 
しかし、クレドさえ作れば組織が機能するのかと言ったら、そうじゃないですよね。私が失敗だったと思うのは、大量採用を実施してから古株社員とじっくり話す機会を設けなかったということなんですよね。ネットマンという組織を素晴らしいものにしたかったので、その思いを新しい人たちにはとことん語りました。クレドを作った意味や何を目指しているかなどを熱く伝えることに力を注ぎました。
 
一方で、古株社員は既に私の気持ちを理解してくれているという驕りがありました。会社が目指していることも、クレドを作った意味も、きっと分かってくれているはずだと勝手に思い込んでいたんです。結局は、古株社員が大勢退職することになってしまい、さらに売上げが厳しくなるといった状況に追い込まれました。
 
経営において組織運営は本当に難しいところですよね。常に課題なのではないでしょうか。
 
従業員20名くらいのうちは問題はあまり表面化しないと思いますが、そこから社員をさらに採用して50名規模にし、売上げも年商10億円、20億円まで引き上げていこうという経営者の方は多いと思いますが、その規模拡大の時が勝負時なんだと思います。ここでマネジメント層を強固にしておかなければ、結局組織は破綻してしまうのではないでしょうか?
 
起業し、上場も果たした友人もいますが、それは組織マネジメントがうまくいったのではなくて、ビジネスモデルがしっかり確立できたからだとみています。モデルさえきちんとなっていれば、ある程度の売上げが立ち、人の気持ちは安定する。落ち着いたところで組織作りに力を入れることができます。
 
しかし、一般的なベンチャー企業はそうはいかないですよね。ビジネスモデルを考えつつ、組織も作っていく。だからこそ、経営は難しいものですよね。私自身はエンジニアには向いていましたが、経営者として向いているかといったら、正直首を傾げてしまいます(笑)。
 
現在の組織については、どうお考えですか?
 
それは非常に答えにくい質問ですね。私は10年も会社を経営していますが、未だに「会社の存在とはなんだろうか」と考えてしまう時があります。
 
ネットマンで働く社員のことを、ネットワーカーキッズと呼んでいます。将来ネットワーカーになっている人という意味を込めて、そう呼んでいます。それぞれやりたいことがあり、ネットマンで何かを成し遂げたくて縁があって入社しています。でも、ある年月いて、スキルと経験を積んで他のフィールドで試してみたくなるのも当然だと思います。仮にネットマンを卒業しても、それはネットワーカーとしての独り立ちであり、また一緒にプロジェクトで協力しあうような関係になるかもしれません。
 
自分自身もネットワーカーであることが求められているということなんですね。
世の中の人たちの求める働き方像が多様化しているなかで、社員、非正社員という二者択一の働き方だけではどうしようもない。子育てもそうですが、親の介護にも直面する働き盛りの人たちも必ず出てくるでしょうから。
 
世の中がそういう流れになってきていますから、遅かれ早かれ私たちが実践している働き方が当たり前というか、そうならなければ社会が成り立たなくなっていくのは目に見えています。その代わり、働く側の専門性はさらに必要とされるでしょうから、個人個人が勉強せざるを得ない環境にはなっていくでしょうね。
 
さて、ここからは永谷研一さん、個人のことについてお伺いしていきたいと思います。
 
個人的なことですか。現在は三島に住んでいて、4人の子供の父親でもあります。朝食は毎日家族全員と食べ、大事な会話の場にすることを自分のルールにしています。そして、考え事は行き帰りの新幹線内で行う。この時間は誰とも話さない時間のなかで考え、それ以外の人とお会いする時間から刺激を受ける。そして、それを次のプロジェクトへのきっかけにもなる。そういうリズムで日々生きていますね。
 
仕事以外の時間は何をされているんでしょうか?
 
子どもと時間を過ごすことが多いのですが、最近は地域のゴミ拾いや地域の生涯学習の一環として理科実験企画の実行委員でもあるのでその運営に走り回っています。日本人の理科離れが昨今話題になっていますが、やはりこれからの日本を支えていくのはモノづくりしかないでしょう。世界競争に負けない技術力を持つためには、幼い頃からの体験、考える力が重要です。遊びながら、実験をする。しかも、子供たちだけではなく、その親御さんも一緒に。例えば、空ペットボトルをロケットに見立てて飛ばす実験をしたり、シャボン玉を液体から自分で作ってみたり。
 
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ことごとく教育分野に力を入れられているということですね。
 
そうですね。結局そうなってしまっていますね。やはり日本人の底力を復活させるためには、というとどうしても教育に目が行ってしまいますね。
 
それでは最後になりますが、起業を目指そうとされている方へメッセージをいただけますか?
 
今起業をしたいと思われている方に聞いてみたいことがあります。それは、なぜ起業しなければいけないのか、そしてなぜあなたでなければいけないのか?ということを聞いてみたいと思います。
 
というのも、私が起業したばかりの頃のことですが、やはり独立心旺盛な仲間が周囲に大勢いました。それぞれ起業しましたが、数年経って10社のうち1社くらいしか残れませんでした。生き残れるか、そうでないかの別れ道はあって、残れる人は使命感が必ず根底にあるんです。つまり、「私でなければならない」という理由をちゃんと持っている人です。しかも、そういう人ほど人生を楽しんでいる。
 
なるほど、それは非常に良い質問ですね。
 
そういう私も、ネットマン創業時は“会社ごっこ”をしていた節があります。上場するんだと意気込み、株主からのプレッシャーに対抗しながら売上げを上げる。でも、ある時「何か違うんじゃないか。自分のやりたいことをやっているのか?」とふと我に返りました。毎月のプレッシャーもあり、そのストレスが社員にも伝わってしまったことが悪循環を生んでしまった気もしています。
 
何度も自分に問い続け、売上げを意識してあれこれ手を出すのではなく、「教育一本に絞りたい」と決めた瞬間に、株主の方に頭を下げにいって、株を買い取らせていただきました。
 
そこで感じたのは、「自分はこれを絶対にやりたい」というのがないと、会社も続かないということ。起業を考えている人には、「なぜ会社を作るのか」と聞いてみたいところですね。
 
それはいいかもしれませんね。
 
私は、ベンチャーのオーナーは覚悟を持って一歩踏み出した、選ばれた人だと思っています。その人が動けば、誰かがついてきて、その人の人生も半分背負いながらお客様にサービスを提供していくわけですから、生半可な気持ちでは務まらない。もしかしたら、サラリーマンとして会社でパフォーマンスを上げているほうが楽しいかもしれないんですよ。
 
だからと言って「企業経営は怖いんだぞ」と脅したいわけではないんです。経営することの楽しさもありますが、想像以上に責任が重いということを肝に銘じておかなければいけないんです。
 
それでも起業の道を選ぶのであれば、とことん頑張ってほしいなと思うのです。そして、カッコいい大人になってほしい。いつか、そんな人をたくさん集めて、大学の授業で、カッコいい大人が次々に講義を行うオムニバス形式のキャリア教育を手掛けていきたいですね。
こんなに、「フツーでカッコイイオトナがこんなにいるんだぞ!お前もできる!ってね」(笑)。
 
その夢は非常に面白そうですね。 永谷さん、今日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。

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経営者略歴

株式会社ネットマン 代表取締役社長
永谷研一氏 (Kenichi Nagaya) 

大学卒業後、メーカーの品質保証業務に2 年携わった後、SI会社に転職、基幹システムのエンジニアとして9 年間主に生産管理システムや営業支援システムを構築を担当。
1999年4月に、ネットマン(Network-er Management Company)を設立。

Company Data

社名 株式会社ネットマン
所在地 【本社】
〒104-0032 東京都中央区八丁堀2-2-4 第6高輪ビル
TEL (03) 3523-5100  FAX (03) 3523-5200

【R&Dセンター】
静岡県駿東郡長泉町
代表者 代表取締役社長 永谷研一
設立 1999年4月2日
業務内容 コンサルティング
研修・セミナー
IT商品の企画・開発・販売
URL http://www.netman.co.jp/

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