語る 経営者インタビュー

2009.08.20 UPInterview Vol.111

株式会社高田自動車学校 代表取締役社長 田村満氏

組織風土や文化で人が育つ、『小さな一流企業』を目指す (後編)

今回は、今野誠一の故郷である岩手県は陸前高田市にある、高田自動車学校にお邪魔いたしました。社長の田村さんは、グリーンツーリズムを組み込んだユニークな取り組みをされて、生徒数を増やすことに成功していらっしゃいます。また地域の活性化への問題意識も非常に高く、この日も地域への思いを強く語ってくださいました。

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それにしても、100ページにも及ぶ事業計画発展書に恐れ入りました。ちなみに、いつ頃から制定され始めたのですか。
 
十数年前ですね。前年度の反省を踏まえて毎年改定をしています。全社員に配布しているのですが、何度も言い続けることで理解してくれるものだと思っていまして、年度始めに5時間ぐらいかけて説明することを習慣にしています。「我が社の経営理念」「近い将来の夢」「我がグループ校の長期繁栄方針」「今年度の経営目標」を僕自らが発表しております。その他は、僕とは別に担当者を置いて、発表してもらっています。
 
「社員へ幸福感」や「家族の誇り」を形にすることだけでもすごいことですが、何と言っても、社員の皆さんと共有されようとする点が素晴らしいですね。
 
ありがとうございます。もちろん文字に起こして見えるようにしたり、口で伝えることも大切ですが、それ以上に僕自身が社員のことを知らなければ何も始まらないと思っているんです。ですから、社員の生年月日や入社年月日から年俸といったものを手帳に貼って常に見ているんです。ただ、どこまでやっても「本当にこれで十分か」って気になって仕方ないんです。心配性というやつですかね。
 
(手帳を見ながら)大事にすることは、まずは知ることから始まるということですね。一人ひとりをきちんと知っていこうという姿勢は真似しなくてはいけないと思います。先ほどの各自動車学校の入校者数や社員のプロフィールと、色々なものが入っていて、まさにスーパー手帳ですね。心配性、いい言葉ですよ。「心配性は経営者の条件」だって言いますから。
 
「心配性は経営者の条件」ですか。それは嬉しいですね。本当に嬉しいです。そう言われたから強調するわけじゃないんですが(笑)、本当に心配性なんです。3校で100名ぐらいのスタッフがいますが、全員の顔も名前も把握しています。誕生日には花束を贈っています。女性にだけですけどね。僕はこれからの時代をリードするのは、女性と子供だと思っているんですよ。しかし、女性は男性と違って、働く上で様々な制約があります。それにもめげずに働いてくれる女性には頑張ってほしいし、感謝の思いを込めて始めたんです。
 
なるほど。考えておられますね。しかし、同じ男性としてはちょっと残念です。男性を代表して男性にも贈っていただくようにご検討をお願いします(笑)。さて、そろそろ今後のことをお聴きしていきたいと思います。今後はどういったことを計画されているんですか。
 
グリーンツーリズムの誘引材料の一つではなく、本腰を入れて農業を始めていかなければならないと思っています。なぜ農業かをお話しする前に、どうして、そんなことを考えたかと言いますと、まず間違いなくい自動車学校の売上が下がっていくからです。18歳人口が減っていますからね。過疎地に行けば行くほど深刻な問題になっています。仮に今、利益が上がっているところも赤字になると思います。最悪の場合は、閉鎖してしまうこともありえますね。
 
時間の問題と言うことでしょうか。

株式会社高田自動車学校 代表取締役社長 田村満氏 インタビュー
(今後の事業展開について熱弁)
 

ええ、そう思います。町に自動車学校がなくなってしまうということは、免許を取るにしても、遠くのどこかに行かなきゃいけないとか、あるいは高齢者講習にしても、70歳以上の方は自動車学校で講習を受けないといけないのですが、そういう方もどこかを探して行かないといけない。そうすると、多くの人に負担が出てくるわけです。自動車学校というのは、その地域になくてはならない存在なんですよ。二つも三つもいりませんけど、一つは絶対必要なんですよ。経営が成り立つように、収益のマイナス面を何かでカバーしなければならない。非常に現実的な話なんですが、絶対的に副業が必要だと思っているわけなんです。
 
なるほど。それでその副業を何にするのかという順番になるわけですね。
 
そういうことですね。弊社では安全というものをキーワードにして展開していますので、運転免許の取得を支援する企業から、「安全を追及する企業」へと位置づけを持っていきたいと思っています。安全といっても様々です。交通安全もあれば、食への安全というものもあります。今、僕が大きな関心と問題意識を持っているのが食の安全です。この問題は、国全体の大きな問題です。ご存知のように自給率は実に低い状態ですし、安全に関する不祥事も多発しています。将来的には農作物への安全というものを絶対に確保するべきだろうなという気がして、農業を始めることにしたんです。
 
スクール近くで行なわれているんですか。
 
株式会社高田自動車学校 代表取締役社長 田村満氏 インタビュー

(農業を熱く語る田村社長)

そうなんです。スクールの向かい側でしていますよ。遠野は少し離れてはいますが、やはりやっています。将来的には、過疎地の自動車学校で赤字になっているところがすごく多いわけですから、少し大それていますけど、その人たちのモデルとなる自動車学校を作りたいと思っています。とにかく挑戦していくことが必要だと、ある種、使命感のようなものを感じています。
 
切々とした思いが伝わってきますね。
 
今野さん、大げさでなく、本当に我々の業界というのは、ますます駄目になっていくんですよ。心配性と言いましたが、18歳人口というのが何名いるのかということを毎年調べて、手帳に貼っています。これは陸前高田のものですが、18歳人口というのは、18年後には0歳の人がうちへ来てくれるわけですよね。その頃には現在の数分の一になってしまうわけなんです。
 
本当ですね。閉鎖しかかった遠野の学校を大きく下回る人数になっちゃうわけですね。
 
そうなんです。さらに10年、20年先をシミュレーションすると散々な数になりますよ。こんな中でどうやって経営していけばいいかということになってくるわけです。もちろん今の事業を投げ出したからといって済む問題じゃないですよね。僕ら中小企業は、今やっていることを充実させながら、新しい仕事も作り出していかなければならないんです。そうしなければ、自動車学校業界だけでなく、この地域はなくなってしまいます。その危機感を共有したいですね。経営者や企業家の方に「一緒に地域を盛り上げていきましょう」と声をかけても、「忙しいし、いいや俺は」といった返事がほとんどなのは残念なことです。今の厳しい現状もありますから無理からぬことではあるのですが、一人二人であがいたところで、どうにもなりません。力を合わせていきたいところですね。社員とともに明日のことを考えて働くのも大事ですけれど、将来を見据えて行動することはもっと大切だろうなと思うんです。
 
自動車学校という業界にも、そしてこの地域についても将来を何とかしたいという思いが強くおありなんですね。
 
もちろんですよ。今、18歳以降の人口がガーンと凹んでいます。なぜ、減ってしまうかというと出生率が云々だけの問題じゃないんです。専門学校や各種学校へ行く、大学へ進学する、それから就職、これで地域から確実にいなくなるわけなんです。大学に行っても、地元岩手に住民票を置いている人が多いですから、本来はもっと深刻です。この現状をまず把握した上で、我々企業家は、どうすればいいかということになるわけですが、僕は、この出て行った人達がなぜ帰って来ないかを知る必要があると思うんですね。隣のおじさんに「あなたの息子はどうしていますか」と聞くと、「東京で家族と幸せに生活しているよ」って。それで「いつ帰ってきます?」とたずねると、「まず帰ってこないだろう」という。「どうして?」と聞くと、「だって仕事ないもの。帰ってきたってやることがないんだよ」ってことになるわけですよ。
 
逆に言えば、仕事を作り出すことさえ出来れば、帰ってくる可能性があるということでもあるんですね。だから、何としても受け皿を我々の力で作っていきたいわけなんです。その中でも、ここ陸前高田で取り組むべきは、一次産業、二次産業だと僕は思っています。例えば、水産加工だって、地元の海から獲れる豊富な産物はほとんど内陸に行ってしまう。または東京の築地に行ってしまって、加工され、それからこっちへ戻ってくるという、おかしな現象が起きているわけなんです。
 
素朴な考え方として、地元で獲れたものを地元で加工できるようにする。まずもってこのことを考えたいですね。これはほんの一例でお話していますが、このように現状当たり前だと思っていることをことごとく疑ってみて、地元で取り組めることを見出していきたいと思うんです。そして、仕事を生み出し、人口を増やし、自動車学校の生徒数も増やしていく。そんなにとんとん拍子にうまくつながっていくとは限りませんが、動かなければ何も変わりません。企業家が一致団結すれば、仕事をつくるということは、決して難しくないと思っているんです。あくまでも一致団結すれば・・・です。特に、一次産業を主体とした分野です。
 
それが農業に結びつくわけですね。
 
そうです。そうしないと、我々も夕張を笑っていられないですよ。今野さんもご出身なんですから、東京で仕事しなくてもいい環境をつくっていただいて、ぜひ岩手にいらして下さい。そして、我々と仕事を作り出すプロジェクトを進めましょう。
 
社長のお話を伺って、大いなる志を感じました。同郷人として、同じ企業家として使命感を感じずにはおられません。手を取り合って、地域を活性化できたらと思います。本日は長時間に渡って貴重なお話をありがとうございました。

株式会社高田自動車学校 代表取締役社長 田村満氏 インタビュー

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経営者略歴

株式会社高田自動車学校 代表取締役社長
田村満氏 (Mitsuru Tamura) 

1947年 生まれ
1971年 高田自動車学校 入社
1978年 同社 常務取締役 就任
1980年 同社 専務取締役 就任
2003年 同社 代表取締役社長 就任

Company Data

社名 株式会社高田自動車学校
所在地 〒029-2203 
岩手県陸前高田市竹駒町字相川74-1
TEL: 0192-55-3990
FAX: 0192-55-1060
代表者 代表取締役社長 田村 満
設立 1968年2月13日
業務内容 ・自動車教習業
・損害保険代理業
・交通安全教育コンサルタント業
URL http://takata.si-dsg.com/

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