株式会社マングローブ
 
語る
株式会社美術出版社
代表取締役社長
大下健太郎氏


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鬼才異彩
株式会社美術出版社 大下健太郎
 
大下社長はいつ代表取締役に就任されたのですか?

1999年、私が33歳のときです。父が少し体調を崩したことがありまして、その時にそろそろ社長交代の時期なんじゃないかという声があがりまして。私の父も33歳で社長に就任したので、同年齢の私にそろそろ座を譲りたいという気持ちになったのかもしれません。

将来美術出版社を背負って立つんだとは思っていても、いざ就任する時にはどのようなことを思われましたか?

「どうにかしなければ」という思いが一番強かったですね。美術出版社に入社した時から会社の状況がそれほど上向きになっておらず、どうにか現状から抜け出したいという気持ちがありました。数社あった競合会社が次々に潰れていく様子を目の当たりにしていましたから、このまま行けば同じ道を辿ることは間違いないと危機感を感じていました。

美術書というのは、制作にコストが掛かる割には部数が作れないというジレンマがあります。しかも、Webの登場により出版業界全体のパイが小さくなってしまい、出版社としての独自の存在価値を見出していかなければ生き残れないというところまできてしまっていました。もはや出版事業だけにしがみついていてはいけないとすら考えていました。



そこでモバイルコンテンツ事業を?

ええ。これは、いただいたご縁に心から感謝しています。たまたま同じビルに事務所を構えていらっしゃる編集プロダクションの社長さんからお声をかけていただき、それが美術出版社にとっては大きな転機となりました。その編集プロダクションは人気のあるゲームの公式攻略本などを制作していて、iモード誕生の初期時代から携帯電話向けゲームサイト制作まで手掛けていました。ちょうどNTTドコモがiモードをスタートした直後に「大下さん、これからはiモードの時代ですよ」という話で盛り上がり、うちがコンテンツ企画を担当し、同社が技術面を担当するというかたちでモバイルサイトの合同企画を推し進めていきました。しかし、いざコンテンツ事業に参入していこうと思っても、一筋縄ではいくわけがない。

というのも、当時はうちだけでなく、どの企業も参入を狙っていましたからね。そんな状況下で真正面からぶつかって行っても門前払いされるだろうと思っていましたから、知人の伝を頼りに何とかプレゼンをする機会を探っていました。なんとかお話をさせていただく機会まで辿りついたのですが、既に契約済みのコンテンツプロバイダーが企画したものとバッティングしないような内容でなければならないというのが難問でした。

自分たちの強みを活かせるコンテンツって何だろう?と改めて考えたときに、頭に浮かんだのは"美術"というキーワード。"美術"という視点でコンテンツ制作をしているところがなかったこともあって、何とかうちの価値を認めていただき、全国の展覧会情報サイトを立ちあげからスタートすることができました。結構地味なコンテンツからのスタートだったんですよ(笑)。

おかげさまで、なかなかうまく行ったんです。その後新しい分野でもやっていけるんじゃないかという自信にもなり、思い切って企画から制作まで自社で手掛けてみようと思って立ち上げたのが、モバイルコンテンツ事業部です。

老舗出版社でありながら、時代の先端にあるモバイル事業を立ち上げた大下社長の決断力と行動力には感心させられます。

運も良かったんだと思いますよ。一見全く異なる分野だと思われるかもしれませんが、コンテンツは社内で企画できますし、出版事業部は漫画家やアーティスト、デザイナー、イラストレーターなど幅広いネットワークを持っていましたから、あとは技術者さえいれば何とかなるだろうという自信があったのです。

また、モバイルコンテンツの場合、雑誌と違って在庫の心配が一切ありません。しかも、ユーザーの通話料から自動的に徴収できる課金型システムも既に確立されていましたから、取りっぱぐれることもない。当時のiモードはまだ現在のように高機能化していなかったので開発コストも低く、万が一失敗してもすぐに手を引けばいいんだくらいにしか考えていませんでした。

自社企画だけではなく、現在東京芸術大学教授で「だんご3兄弟」「ピタゴラスイッチ」の制作で有名な佐藤雅彦氏監修によるプロジェクトなどによってモバイル事業も軌道に乗り、おかげ様で今では全社売り上げの約3割弱を占めるほど事業としての成長をみせています。

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