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株式会社美術出版社
代表取締役社長
大下健太郎氏
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後編 Page
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経営者略歴
Company Data
鬼才異彩バックナンバー
経営者に学ぶ
(1)『自社の強みを活かしたサービスで
勝負する』
(2)『事業部別の人事制度を導入』
(3)『社員の働く環境を考える』
(4)『一事業に固執するのではなく、
事業の枠を超えた取り組みに
挑戦する』
(5)『これだと思ったことはきちんと
やり続ける』
株式会社美術出版社
所 在 地:東京都千代田区神田神保町2-38 稲岡九段ビル8F
事業内容:書籍・雑誌の制作・出版・販売
携帯モバイルコンテンツ事業
U R L:
http://book.bijutsu.co.jp/
先週に引き続き、株式会社美術出版社 代表取締役社長 大下健太郎氏のインタビューをお届けいたします。後編では、組織運営と今後に向けたお話をお聞きしました。
モバイルコンテンツ事業部では、かなり積極的に採用活動をされているようですが。
モバイル事業部にとって人を採用することは、私たちにとっては新しい挑戦です。例えば、うちの『美術手帖』編集部で人材を募集すれば、あっという間に100名が集まるんです。学生時代に好きで学んだ美術に関わりたいと希望する人から東大大学院出身や有名美術系大学出身の成績優秀者まで驚くほど応募が殺到します。それだけ美術出版社や『美術手帖』への信頼度が高いということなんですよね。ところが、美術出版社の「モバイルコンテンツ事業部」として募集しても、お恥ずかしい話ですが、なかなか応募が集まらないのが悩みなんですよ。会社の拠点もIT企業の集まる六本木ヒルズではなく、老舗出版社イメージの神保町ですし(笑)。コンテンツ制作の会社としての魅力をうまく引き出していきたいのですが。
社内でも、出版事業部とモバイルコンテンツ事業部の雰囲気はかなり違うのでしょうか?
モバイルの方は技術的進歩や流行の変化も早いので、社員の仕事ぶりにもスピード感があります。また、入社する時から心の持ち方が大きく違うようですね。モバイルの方は常に自分のスキルを高めていきたいと強く思う人が多く、仮に今の環境でこれ以上学べるものがなければ、次のフィールドを求めていくという風に考えるのが当たり前。一方で、出版事業の人たちは「もともと美術が好きで・・・」という人が多く、好きな美術雑誌の制作に関われることに楽しみとやりがいを感じるといった、ゆったりとした空気が流れているのです。
どちらが良いとか悪いとかを抜きにして、両者のタイプが全く違いますので、うちでは事業部別の人事制度を導入しています。そうしないとモバイル事業部で人を採用できたとしても、従来の制度では美術出版社で働くことに魅力を見出してはくれないだろうと思ったからです。また、スキルアップや情報共有を積極的に行うために、今後社内勉強会や教育制度を整えていく必要があるだろうとも感じています。
なるほど。まるで別会社のように考えていかなければならないと?
確かに、同じようには考えにくいのですが、事業をふたつに切り離して分社化するようなことも考えにくいのです。というのも、美術専門の美術出版社がデジタルコンテンツを手掛けるということに大きなメリットがあるからです。例えば、うちが発行している雑誌でお世話になっている作家の方に「携帯電話向けコンテンツに絵を描いてほしい」とお願いすると、「歴史のある編集部がそう言うのだから仕方ないな・・・」ということで話がうまくいく。作家の方にしてみれば、デジタルものは画質が悪かったり、色や線の強弱が出しにくいので、ツールとしては低く見られがちなんですよ。そういった新領域に対する協力を得られるのは、美術出版社という看板があるからこそだと思っています。
モバイル事業へと拡大されるなかで、大下社長の経営者としての感覚に変化はありましたか?
以前に比べて、社員の働く環境について意識するようになりました。先ほどもお話しましたが、出版社としてだけを考えたら、歴史ある看板を背負ってこのままでも良いのかもしれません。しかし、モバイル事業に関していうと、美術出版社の看板は通用しない。そうすると、もう少し働きやすい環境を作らなければとか、時代に合わせて制度をきちんと整備しなければいけないんじゃないかと意識するようになってきました。
最近出版事業とモバイル事業の合同会議にでるようになった新しい出版事業部のマネージャーも先日そのスピード感の違いに非常に驚いていました。「大下社長がいつも早口で、追い立てるようにしゃべる理由が分かりました」と言うぐらい、違いが明らかだったというんです。
もちろん両事業部ともまるっきり同じようにする必要はありませんが、人事制度やワーキングスタイルで良い部分は徐々に合わせていきたいと思っています。
さて、今後についてはどのようにお考えですか?
2000年にスタートしたモバイル事業ですが、業界的にみればピークは既に終わっています。「着メロ」は頭打ちになり、「着うた」は音楽業界だけが儲かる仕組みになっているので、コンテンツプロバイダーにとってはうま味のない構図になっています。あれだけ人気を博した待ち受け画面に対してもユーザーはそれほど興味を示さなくなり、今かろうじて勢いのあるのは「デコレーションメール」というメールを装飾する画像だけと言えるでしょう。最近では無料サイトも増えてきまして、従来の課金型システムに頼らないビジネスも発展してきています。だから、出版事業、モバイル事業などに固執するのではなく、事業の枠を超えた取り組みをしなければ企業の存続は難しくなるだろうとヒシヒシと感じます。
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