株式会社マングローブ
 
語る
株式会社美術出版社
代表取締役社長
大下健太郎氏

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鬼才異彩
株式会社美術出版社 大下健太郎
 
御社が実施されている『美術検定』というのも、新しい取り組みのひとつですよね。

そうですね。当初は美術ボランティア育成に役立つツールとして位置づけたいと思っていました。美術館という存在が箱物行政の悪の象徴みたいに言われたり、無駄なお金を使ってこんな何億円もするものを建ててという言われ方をされる時期がありました。

美術館自体も自分たちの存在意義を打ち出していかなければというので、地域の方たちとの交流を図り、地域の活性化の一翼を担うことが一番だろうと。そうなると、ボランティア活動とかワークショップを積極的にやっていくことが美術館にとってより重要になってくる。そういったことにスタッフ側として参加できる人々を養成するための「検定試験」ということで事務局をやろうと決めたのです。主婦の方や社会との接点を持ちたいけど、どうやって持ったらいいか分からない、そのような方たちが美術館などで働くことで社会との接点を持てる機会を作れるんじゃないかと思いまして。

ところが、蓋を開けてみたら就職氷河期であったこともあり最初受験者は美術業界で働きたい人がほとんどで・・・。美術館側としてみれば、自分たち学芸員の資格を邪魔するやつらが来るんじゃないかと思って戦々恐々としてしまったのです。

そんなことで当初は自分たちの思いとは全然違う方に動いてしまったのですが、3年経ちやっと私たちの思いが理解されてきたように思います。この検定を受けて現在ボランティアとして活躍されている方やギャラリーで働き出した方、美術館で働き出した方が増えてきましたから。始めたときには、「いったいこの資格が取れてどうなるんだ」と言われて困ってしまうこともありましたが、ようやく具体的な例が出せるようになったことがとても嬉しいです。
※美術検定http://www.bijutsukentei.jp/

事業という形でなく、ユニークな取り組みもされているんですね。


出版社だからといって、本や雑誌の制作だけに捉われる必要はないと思っています。極端なことを言えば、出版社が生業にしているのは企画と編集であって、印刷などは外注なんですよ。だから、企画力や編集力が重要で、最終的なアウトプットが何であるかというのは、あまり関係ないんじゃないかと私は思うんです。こんなことを言うと、出版業界の人たちに嫌われてしまいそうですが・・・(笑)。紙であろうと、携帯電話、PCであろうとも、最終的に選ぶのは私たちではなく、ユーザーが選ぶものだと思っています。ですから、特に "美術"というジャンルにおいて、自分たちで企画、編集加工している中でできることの幅を広げていくことを目標にしていきたいと思っています。デザイナーとの強いネットワークもあるわけですから、アートやデザインという強みを活かした会社に成長させていきたいと思っています。そのなかで、古くからの美術の専門書もしっかり出版し続けていられるような体力を維持していきたいと思っています。

これまで培ってきた財産やノウハウを色々なところに活用していかれるということですね。今後にむけての経営課題とはどんなことでしょう?

一番は組織づくりだと思っています。出版事業の方も、良いものをきちんと作り続けていく姿勢は悪いことでは決してありませんが、会社はボランティア活動をするところではありませんから、良いものを作る一方で「売れるものを作る」という意識も必要なんです。一部の人にしか理解されないような専門的なものよりも、もっと一般的なもので、美術を勉強する一歩になれるようなものだったっていい。それで、私たちのお客様層が広がればいいんですから。何十年も手掛けてきたことだけやっていても、会社が生き残れる時代ではもはやなくなってきてしまっている。だからこそ、今後は何度も話し合いを重ねながら、社員のベクトル合わせをしていくことが大事なんだと思っています。

普段は新企画などを考えることに集中されている日々かと思いますが、休日はどのように過ごされているのでしょうか?

仕事はインドア派ですが、趣味はスキーと山登りなんです。毎年冬になるとスキー場ではなく誰もいない山を登り、思いっきりスキーを堪能しています。北海道や北アルプスの山々でパウダースノーを滑ること生きがいにしています。でも、大自然のなかに身をおいていると何かから開放されている感じがすると同時に、常に状況に合わせて決断していかなくてはいけない緊張感というのが自分にとって心地よい状況のようですね。山での行動はすべて瞬時の判断を要求されますが、これは経営者の仕事として共通していることだと思います。



それでは最後に起業を目指している方へのメッセージをいただけますか?

一言でいうと「ちゃんとやる」ということでしょうか。自分が長年この世界で仕事をしてきまして、尊敬でき、成功されていると感じた方々は集中して仕事をし、質にこだわりを持ち続け、継続的に力を抜かず、パートナーやお客様に対してウソをつかず、決してうらぎらない方でした。もともと私自身は飽きっぽい性格で、下手をすればすぐにやめたりしてしまいそうになる。そんなときに、尊敬する先輩たちの姿を見上げてこれじゃいけないんだと自分を奮い立たせてきました。経営者としてまだまだ未熟者ですから、あまり大きなことは言えませんが、これだと思ったことはきちんとやり続けることが大事なんだということをいつも自分に言い聞かせています。

本日は貴重なお話をありがとうございました。


【インタビュー後記】
「MG−NET+」史上最も歴史ある企業で、一昨年前に100周年を迎えられました。
その記念として、創業者である大下藤次郎氏が残されたすべての作品を画文集と評伝にまとめた豪華本「水絵の福音使者」を出版したといいます。
中身を拝見させていただき、一つの時代を作った方の作品が丁寧に後世に伝えられていることに心を
動かされました。(実際の作品は島根県にある美術館に寄贈されています。)
そんな歴史ある企業を背負って立ち、新旧の融合を図りながら貪欲に新領域にも進出していこうという
大下社長の今後の活躍から目が離せません。
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